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コモドール PET 2001(Commodore PET 2001)は、米国のコモドール社(Commodore International)が1977年に発表した、初期のパーソナルコンピュータ(PC)の一つです。PET(Personal Electronic Transactor)シリーズの最初のモデルであり、Apple II、Tandy TRS-80とともに「1977年の三大PC」として知られています。
PET 2001 は、オールインワン設計、使いやすい BASIC(プログラム言語)の搭載、比較的手頃な価格により、主に教育市場や小規模ビジネス向けに成功を収め、後のコモドール製コンピュータ(VIC-20、C64)につながる重要な製品となりました。
1. PET 2001 の基本仕様
- 発売年:1977年
- 開発元:コモドール(Commodore International)
- CPU:MOS 6502(1.0MHz)
- メモリ:
- 初期モデル:4KBまたは8KB(拡張可能)
- 後期モデル:最大32KB
- ストレージ:
- 内蔵カセットテープドライブ
- 外部フロッピーディスク(オプション)
- ディスプレイ:
- 9インチモノクロCRT(内蔵)
- 40×25文字の文字表示(グラフィック機能なし)
- キーボード:
- 一体型キーボード(初期モデルはゴム製の小型キー)
- オペレーティングシステム:
- ROM に内蔵された BASIC インタプリタ
- オペレーティングシステムとして CBM BASIC(Microsoft BASIC)を採用
- インターフェース:
- IEEE-488(周辺機器接続用)
- カセットインターフェース
- ユーザーポート(プリンタやモデム用)
2. PET 2001 の特徴と革新性
① オールインワンデザイン
PET 2001 は、コンピュータ本体、キーボード、CRTディスプレイ、カセットテープドライブが一体化したオールインワン設計を採用しており、1970年代の一般的なコンピュータ(本体・ディスプレイ・キーボード・ストレージが別々)とは一線を画していました。この設計は、後の一体型PCの設計思想に影響を与えました。
② 使いやすい BASIC の搭載
PET 2001 には、Microsoft BASIC をベースとした CBM BASIC(Commodore BASIC)が標準搭載されており、初心者でも簡単にプログラムを作成できる環境が整っていました。BASIC は起動するとすぐに使用可能であり、フロッピーディスクや特別なソフトウェアが不要だったため、教育用途やプログラミング入門に最適でした。
③ コストパフォーマンスに優れた設計
- Apple II($1,298~)や TRS-80($599)と比較して、PET 2001 は $795 という価格で提供され、当時のPC市場では手頃な価格設定でした。
- MOS 6502 プロセッサを採用することで、低コストながら高性能な処理能力を実現しました。
④ 業務・教育市場向けの普及
PET 2001 は、主に教育市場や中小企業向けに販売され、多くの学校やオフィスで活用されました。特に、数学やプログラミング教育、財務管理用途に適していたため、1970年代後半から1980年代前半にかけて普及しました。
3. PET 2001 の限界と改良
PET 2001 は画期的なコンピュータでしたが、いくつかの課題もありました。
① 初期モデルのキーボードの問題
- 最初の PET 2001 は、小型のゴム製キーボードを採用しており、打鍵感が悪く、タイピングしにくいと批判されました。
- 後のモデルでは、フルサイズのキーボードに改良され、ユーザー体験が向上しました。
② 拡張性の制約
- PET 2001 は、初期モデルではメモリが 4KB / 8KB しかなく、大規模なプログラムの実行には不向きでした。
- 後継機種(PET 2001-8N / 16N / 32N など)ではメモリが最大 32KB まで拡張され、より実用的になりました。
③ グラフィック機能の欠如
- PET 2001 は基本的に文字表示専用で、グラフィック機能がないため、ゲーム用途には不向きでした。
- 後の Commodore 64 などのモデルでは、グラフィック機能が強化された。
4. PET 2001 の後継機と影響
PET 2001 の成功を受け、コモドールは PET 3000 / 4000 / 8000 シリーズ へと発展させました。特に Commodore PET 4000 シリーズ は、オフィス向けや科学技術計算用途で広く使用されました。
さらに、PET シリーズの成功を踏まえて、コモドールは 1980年代に以下のような 大ヒット製品 を生み出しました。
- VIC-20(1981年):安価なホームコンピュータとして成功。
- Commodore 64(1982年):世界で最も売れた 8ビットPC(1,700万台以上出荷)。
- Amiga シリーズ(1985年~):先進的なグラフィックとマルチメディア機能を搭載。
PET 2001 は、コモドールのコンピュータ事業の基礎を築いただけでなく、パーソナルコンピュータ市場全体の成長を加速させる役割を果たしました。
5. まとめ
PET 2001 の重要性
1. Apple II、TRS-80 と並ぶ、1977年の「三大PC」の一つ
2. 世界初のオールインワン設計のパーソナルコンピュータ
3. Microsoft BASIC を標準搭載し、プログラミング教育に貢献
4. 低価格で普及し、中小企業や学校で広く採用
5. 後の Commodore 64 や Amiga シリーズの開発につながる基盤となった
PET 2001 は、現在の パーソナルコンピュータの原型 を示した画期的なマシンであり、その後のPC市場の発展に多大な影響を与えた歴史的なコンピュータでした。
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