TOP > 半導体技術・産業動向の教養 > インテル 4004(Intel 4004)の概要

インテル 4004(Intel 4004)の概要

Intel 4004 は、1971年にインテル(Intel)が発表した世界初の商用マイクロプロセッサです。このプロセッサの登場により、コンピュータの小型化と低コスト化が進み、現在のパーソナルコンピュータ(PC)や組み込みシステムの発展に大きな影響を与えました。

インテル 4004 は、CPU(中央演算処理装置)の機能を単一のチップに収めた初のプロセッサ であり、後のコンピュータ業界に革命をもたらしました。


1. Intel 4004 の基本仕様

- 発表年:1971年11月15日
- 開発元:Intel(インテル)
- 設計協力:フェデリコ・ファジン(Intel)、テッド・ホフ(Intel)、マサトシ・シマ(Busicom)
- アーキテクチャ:4ビット
- 動作クロック:740kHz(0.74MHz)
- トランジスタ数:2,300個
- アドレスバス:12ビット(最大 4KB のメモリ空間)
- 命令セット:46種類
- 製造プロセス:10μm(マイクロメートル)PMOS
- パッケージ:16ピンDIP(Dual Inline Package)


2. Intel 4004 の開発経緯

① Busicom との共同開発
Intel 4004 は、日本の電卓メーカー「Busicom(ブジコン)」のために設計されました。
Busicom は、当時の電卓に使用されていた複雑なカスタムIC(集積回路)を簡素化し、1つの汎用プロセッサで多くの機能を処理できるようにすることを目的として、Intel に開発を依頼しました。

Intel の技術者である テッド・ホフ(Marcian "Ted" Hoff) は、個別のカスタムICではなく、プログラム可能な1つの汎用プロセッサを開発するというアイデア を提案しました。
このプロジェクトには、Intel のエンジニア フェデリコ・ファジン(Federico Faggin) が主導的に関わり、日本人技術者 嶋正利(マサトシ・シマ) も設計に貢献しました。

最終的に開発されたのが、Intel 4004(4ビットCPU)、4001(ROM)、4002(RAM)、4003(シフトレジスタ)からなる「MCS-4」マイクロコンピュータ・チップセット でした。

② Intel 4004 の商用展開
Busicom は Intel 4004 を採用した電卓を販売しましたが、Intel はその 汎用性に着目し、1971年に一般市場向けに販売を開始。
これにより、4004 は 最初の商用マイクロプロセッサ となり、多くの技術者や企業がマイクロコンピュータの開発に取り組む契機となりました。


3. Intel 4004 の技術的特徴

① 世界初の単一チップ・マイクロプロセッサ
- Intel 4004 は、CPUの機能(演算、制御、レジスタ管理など)を単一のシリコンチップに統合した初のプロセッサ でした。
- それまでのコンピュータは、大型のTTLロジック回路や複数のICを組み合わせてCPUを構成していましたが、4004 により、コンピュータの小型化とコスト削減が可能になりました。

② 4ビットアーキテクチャ
- 4004 は 4ビットのデータ処理が可能なプロセッサ であり、主に 電卓や組み込みシステム向け に設計されていました。
- 4ビット CPU は、1回の命令で 0~15(2進数の 0000~1111)の値を扱うことができるため、電卓などの簡単な計算には十分でした。

③ プログラム可能なコンピュータ
- 4004 は マイクロプロセッサとしてプログラム可能 であり、電卓だけでなく、組み込みシステム、制御機器、実験装置など、さまざまな用途に利用可能 でした。
- これにより、ハードウェアの設計を変更せずに、ソフトウェアの変更によって機能を変更できる時代が始まりました。


4. Intel 4004 の影響

① マイクロプロセッサ革命の始まり
Intel 4004 は、コンピュータを「小型化」「低価格化」する可能性を示した画期的なプロセッサ でした。
これにより、後の 8ビット(Intel 8008、Intel 8080)、16ビット(Intel 8086)、32ビット(Intel 80386)、さらには現在の 64ビット(Intel Core シリーズ)へと進化していく流れが生まれました。

② パーソナルコンピュータ(PC)の誕生
Intel 4004 は、単体では PC に向いたプロセッサではありませんでしたが、マイクロコンピュータ時代の幕開け を告げました。
後継の Intel 8080(1974年) は、世界初のパーソナルコンピュータ 「Altair 8800」 に搭載され、PC時代を切り開くことになります。

③ 組み込みシステムへの影響
- Intel 4004 は、電卓や制御機器、組み込みシステム向けのプロセッサとして広く活用 されました。
- 今日の 家電製品、医療機器、自動車のエンジン制御、工業用ロボット など、組み込みコンピュータの発展に大きく寄与しました。

④ マイクロプロセッサ市場の誕生
- Intel 4004 の成功を受け、1970年代以降、多くの企業が マイクロプロセッサ市場に参入 しました。
- Motorola 6800、MOS 6502、Zilog Z80 など、様々なアーキテクチャが登場し、コンピュータの普及を加速させました。


5. Intel 4004 の後継機

Intel 4004 は、4ビットの制約があり、より高性能なプロセッサが求められるようになりました。
これに対し、Intel は以下の後継プロセッサを開発しました。

- Intel 8008(1972年):8ビット版のプロセッサ(商業的には失敗)
- Intel 8080(1974年):大幅に改良された 8ビットプロセッサ(Altair 8800 に採用)
- Intel 8086(1978年):16ビットプロセッサ(IBM PC の基盤)
- Intel 80386(1985年):32ビットプロセッサ(Windows の基礎)

このように、Intel 4004 から始まった技術が、現在のパソコンやスマートフォンにまで繋がる発展を遂げています。


6. まとめ

Intel 4004 の意義Intel 4004 は、現代のコンピュータ産業の基礎を築いた画期的なプロセッサ であり、コンピュータの歴史における最も重要な発明の一つです。
1. 世界初の商用マイクロプロセッサ
2. コンピュータの小型化・低価格化の先駆け
3. プログラム可能なプロセッサとして、組み込み機器に影響
4. PC やマイクロプロセッサ市場の発展の起点
5. 現在の CPU(Intel Core シリーズなど)の原点





[オススメ記事]エサキダイオード(Esaki Diode)とは
[オススメ記事]アルテア8800(Altair 8800)の概要