TOP > 半導体の年表 > 2025年の半導体産業・技術分野の重要な動向【暫定】
2025年の半導体産業は、生成AIの需要拡大、地政学的な緊張の高まり、各国の産業政策の変化など、複数の要因が複雑に絡み合い、技術革新と市場再編が進行しています。以下に、産業、技術、政策の各側面から主要な動向をまとめます。
1. 世界半導体市場の成長と構造変化
2025年の世界半導体市場は、前年比13.8%増の7,167億ドルに達すると予測されています。特に生成AI向けのGPUやデータセンター向けの高性能チップが市場を牽引しています。一方で、自動車向けや汎用ロジックなどの成熟セグメントは在庫調整の影響で成長が鈍化しています。
✅AIとデータセンターの需要拡大:生成AIの普及により、データセンター向けの高性能半導体の需要が急増しています。
✅地域別の動向:中国は月産1,010万枚の生産能力を持ち、世界市場の約1/3を占める見込みです。アメリカはNVIDIAの成長が著しく、2025年には次世代AIチップ「Blackwell」の投入が予定されています。日本ではTSMCの熊本工場が量産を開始し、国内生産能力の強化が進んでいます。
2. 技術革新と新たな競争軸
半導体技術は、微細化の限界に直面しつつも、新たなパッケージング技術や設計手法の導入により進化を続けています。
✅TSMCの新技術:TSMCは2028年に導入予定の「A14」プロセスを発表し、従来のN2チップと比較して15%の高速化または30%の省電力化を実現するとしています。また、「System on Wafer-X」技術により、16個以上の大型チップを統合した高性能パッケージの開発を進めています。
✅HuaweiのAIチップ開発:Huaweiは新たなAIチップ「Ascend 910D」を開発中で、NVIDIAのH100に匹敵する性能を目指しています。先進的なパッケージング技術を採用し、複数のダイを統合することで性能向上を図っています。
✅設計手法の変化:「Shift-left」と呼ばれる新たな設計手法が注目されており、設計初期段階での検証を強化することで、開発期間の短縮と品質向上を目指しています。
3. 各国の産業政策と地政学的影響
半導体の重要性が増す中、各国は自国の産業基盤強化と供給網の安定化を目指し、積極的な政策を展開しています。
✅アメリカの動向:IntelはCHIPS法に基づき78億ドルの連邦補助金を受け取ったものの、競争力強化のために1万人規模の人員削減と設備投資の削減を発表しました。
✅EUの課題:EUは2030年までに世界の半導体生産の20%を目指す戦略を掲げていますが、欧州会計監査院は投資の分散と資金調達の不十分さから、この目標の達成は現実的でないと指摘しています。
✅中国の戦略:Huaweiは先進的なAIチップの開発を進めるなど、米国の制裁下でも技術革新を続けています。
✅韓国の政策提案:韓国の大統領候補である李在明氏は、国内で製造・販売される半導体に対して最大10%の税額控除を導入することを公約に掲げています。
✅日本の2nm戦略:
⭐ラピダスは、北海道千歳市に建設中の最先端半導体工場で、2025年4月から2nmプロセスの試作を開始。この試作段階では、技術の検証やプロセスの最適化が行われ、2027年の本格量産開始を目指す。
⭐ラピダスは2nm技術の開発に向け、アメリカIBMやベルギーimecと提携。
⭐2025年4月にはオランダのディック・スホーフ首相が千歳工場を視察し、日蘭間の技術協力への期待を表明。
⭐日本政府は、ラピダスの2nm半導体量産計画を支援するため、約2,000億円(約13億ドル)の追加投資を計画。
⭐北海道という立地条件から、優秀なエンジニアの確保が課題となっており、国内外の大学や研究機関と協力し、人材育成に注力。
4. まとめと展望
2025年の半導体産業は、生成AIの需要拡大、技術革新、各国の政策対応など、多面的な要因が交錯する中で成長を続けています。今後も、技術開発と地政学的リスクのバランスを取りながら、持続可能な成長戦略の構築が求められるでしょう。
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