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半導体市場と設備投資の重要性
半導体市場を理解するうえで、半導体製造に関連する設備投資の状況を知ることは非常に重要です。半導体産業はその製造設備に対する巨額の投資によって支えられています。たとえば、2021年の半導体市場規模は5559億ドルに達しましたが、同年の半導体設備投資額は1520億ドル(IC Insights発表)とされています。この設備投資額は市場規模の約28%を占めており、極めて高い比率が特徴的です。
設備投資額が大きい理由
半導体製造における設備投資が大きい理由として、以下の2つが挙げられます。
1. 高度な技術要件による設備の高額化
半導体の製造には高度な技術が必要であり、それに伴って製造設備のコストが非常に高くなります。特に、製造環境を整えるための施設や機器には巨額の投資が必要です。
2. 半導体および製造技術の進化
半導体そのものも製造技術も、まだ発展途上にあり、新技術の導入には大きなコストがかかります。技術の進歩により、設備の一般化が進むまでには時間を要するため、設備投資額が高止まりしているのです。
製造環境と設備投資の関係
クリーンルームの清浄度要件
半導体製造では、高度に管理された清浄な環境が必要です。製造現場で使用されるクリーンルームは、食品や薬品工場をはるかに超える清浄度を求められます。以下はクリーンルームの清浄度分類の一例です(米国連邦規格)。
- 自動車部品工場・治療室: クラス1000~100000
- 薬品・食品工場: クラス100~100000
- 電子・精密部品工場: クラス100~10000
- 半導体工場: クラス1~100
たとえば、クラス100では直径0.5㎛(マイクロメートル)の微粒子が1立方フィート内に100個以下でなければなりません。このレベルの清浄度を維持するためには、大規模なクリーンルームや特殊な空調設備が必要であり、それがコスト増大の一因となっています。
製造装置の高度化
半導体製造装置には、以下のような高度な技術が求められます。
- 直径300mmのシリコンウェハーに均一な薄膜を成膜する技術
- シリコンウェハーの搬送を支える精密な機械工学
- 回路を焼き付ける「露光装置」などの高精度な機器
特に露光装置は「史上最も精密な機械」ともいわれ、1台あたり200億円以上する場合もあります。このように、製造装置自体が非常に高額であることが、設備投資額を押し上げています。
技術進化と設備投資の関係
半導体の微細化
半導体産業における重要な進化の1つが「微細化」です。半導体の集積密度は2年ごとに2倍になるとされ、この進化が製造設備の高度化とコスト増加を招いています。たとえば、以下のようなプロセスノードの進化が挙げられます。
- 32nm(ナノメートル)
- 22nm
- 14nm
- 10nm
現在では5nmや4nmプロセスの実用化が進んでおり、さらなる微細化が見込まれています。これに伴い、製造装置の開発コストも上昇しています。
設計技術の重要性
半導体内部には複雑な回路が組み込まれており、小型化と高性能化を両立するためには高度な設計技術が必要です。このスペース効率の高い回路設計も、半導体の進化を支える重要な要素となっています。
結論
半導体市場はその規模の大きさだけでなく、製造設備への莫大な投資によって支えられています。製造環境の清浄度要件や高度な装置の開発、さらに新技術の進化が、設備投資を高水準に保っています。今後も微細化や技術革新が進む中で、半導体産業における設備投資は引き続き重要な役割を果たしていくでしょう。
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