TOP > 半導体年表 > 1969年の半導体産業・技術分野の重要な動向
1969年は、半導体技術の進化、集積回路(IC)の実用化の加速、半導体メモリ技術の進展が見られた年であり、また、宇宙開発の分野でも半導体技術の活用が進みました。特に、アポロ11号の月面着陸におけるICの採用は、半導体産業の発展における象徴的な出来事でした。
1. アポロ11号の月面着陸とICの活用
1969年7月20日、アポロ11号が人類初の月面着陸を達成しました。このミッションでは、半導体IC技術が重要な役割を果たしました。
アポロ誘導コンピュータ(AGC)にICが採用
●アポロ宇宙船の誘導コンピュータ(Apollo Guidance Computer, AGC)には、フェアチャイルド・セミコンダクター製のICが使用されました。
●AGCには約4,000個のICが搭載され、宇宙船のナビゲーションや制御を担当しました。
●これは、ICが本格的に実用化された最初の大規模な事例であり、その後の民生市場への普及の大きなきっかけとなりました。
この成功により、ICは軍事・航空宇宙産業だけでなく、民間市場でも信頼できる技術であると認識され、以降のコンピュータやエレクトロニクス機器に急速に普及していきました。
2. Intelが最初の製品「3101 64-bit SRAM」を発表
1968年に設立されたIntel(インテル)は、1969年に最初の商用製品となる「3101 64-bit SRAM(Static RAM)」を発表しました。
3101 64-bit SRAMの特徴
●高速なバイポーラSRAMであり、従来の磁気コアメモリと比べて大幅に小型化。
●軍事・工業用途向けに開発され、後に民生市場にも展開。
●半導体メモリ市場の成長の先駆けとなり、1970年代以降のDRAM市場の発展につながる。
この製品の登場は、半導体メモリの発展を加速させ、将来的なDRAM、EEPROM、フラッシュメモリの進化へとつながっていきました。
3. MOSトランジスタの進化とCMOS技術の研究
1969年は、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタ技術の発展が続き、特にCMOS(Complementary MOS)技術の研究が進みました。
MOS技術の主な進展
●低消費電力の特性が評価され、小型電子機器への応用が進む。
●従来のバイポーラトランジスタに比べて集積度が向上し、ICの高集積化が進む。
●CMOS技術の研究が進展し、将来的な省電力デバイスの開発につながる。
CMOS技術は、この時点ではまだ実用化されていませんでしたが、1970年代に入ると民生用ICとしての採用が進み、1980年代にはパソコンやモバイル機器の省電力化に大きく貢献しました。
4. LSI(大規模集積回路)技術の発展
1969年には、従来のSSI(Small Scale Integration:小規模集積回路)やMSI(Medium Scale Integration:中規模集積回路)に続き、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)技術の開発が進展しました。
LSI技術の主な特徴
●トランジスタ数が1,000個以上のICが実用化。
●計算機や通信機器におけるLSIの採用が増加。
●半導体製造技術の向上により、LSIのコストが下がり始める。
このLSI技術の発展が、1971年の最初のマイクロプロセッサ「Intel 4004」の開発へとつながりました。
5. 日本の半導体産業の成長
1969年には、日本の半導体産業も大きな成長を遂げ、世界市場への本格的な参入が始まりました。
日本企業の主な動向
●日立製作所、NEC、東芝、三菱電機がICの研究開発を強化。
●シャープがMOS技術を応用した電卓向けICの開発を進める。
●日本政府が半導体産業への投資を拡大し、技術開発を推進。
特に、日本企業はこの時期にMOS技術を活用した電卓や家電向けICの開発に注力し、1970年代以降の世界市場での競争力を強化しました。
6. 半導体製造技術の革新
1969年には、半導体の製造技術も進化し、より高度なICの生産が可能になりました。
主な製造技術の進展
●フォトリソグラフィ技術の向上により、微細加工技術が進化。
●イオン注入技術の研究が進み、半導体の特性をより精密に制御可能に。
●エピタキシャル成長技術の改良により、高品質なシリコンウェーハの供給が増加。
これらの製造技術の進化が、ICの高集積化、コスト削減、大量生産の実現へとつながりました。
7. 半導体の軍事・宇宙分野での利用拡大
1969年には、米国の軍事・宇宙開発において半導体技術の採用がさらに進展しました。
主な動向
●NASAが宇宙開発プロジェクトでICを本格採用し、宇宙機器の小型化・高性能化が進む。
●米軍が誘導兵器システムや通信機器にICを活用し、性能向上を図る。
●DARPA(国防高等研究計画局)が半導体技術の研究開発を支援し、最先端技術の発展を加速。
この軍事・宇宙分野での活用は、その後の民生用コンピュータやエレクトロニクス産業の発展に大きな影響を与えました。
まとめ
✅ アポロ11号の月面着陸でICが本格採用され、ICの信頼性が証明された。
✅ Intelが最初の製品「3101 64-bit SRAM」を発表し、半導体メモリ市場の先駆けとなった。
✅ MOSトランジスタ技術が進化し、CMOS技術の研究が進展。
✅ LSI技術が発展し、高集積度のICの開発が進む。
✅ 日本の半導体企業がIC市場に本格参入し、競争力を強化。
✅ 半導体製造技術が進化し、微細加工技術やイオン注入技術が発展。
✅ 軍事・宇宙分野での半導体の活用が拡大し、民生市場への波及が加速。
1969年は、ICの実用化が進み、半導体産業が急成長を遂げた重要な年だった。
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