TOP > 半導体技術・産業動向の教養 > トランジスタの発明
半導体の開発が始まって、すぐに今のような小さく高性能な半導体が作られたわけではありません。
半導体の素材自体は、真空管ラジオの前身である鉱石ラジオの時代から使われていましたが、まだ機能をもった「半導体素子」にはなっていませんでした。機能をもった半導体素子としてトランジスタが発明されたとき、半導体の歴史が幕を開けたのです。
半導体は当初、通信用途で使われていた真空管に代わるものとして研究が進められており、実際に長距離電話や軍用無線通信などで必要とされていました。
トランジスタが発明されたのは1947年12月23日のことです。当時の米国AT&Tのベル研究所ではジョン・バーデイーンとウォルター・ブラッテン、そしてウィリアム・ショックレーの3人により、半導体の研究が行われていました。ベル研究所とは電話の発明者として有名なグラハム・ベルの名前を冠した研究所で、主に電気通信に関する技術の研究を行っていました。その日、バーディーンとブラッテンは実験に取り組み、 ついに点接触型トランジスタの開発に成功したのです。しかしながら、まだこの時点では高純度グルマニウムに金でできた2本の針を立てたもので、信号が増幅されるのを確認したという簡単なものでした。増幅の特性も不安定で実用化には至らないものではありましたが、歴史的な出来事であったのは事実です。
この研究結果を受けてショックレーはさらに改良を重ね、5週間後の1948年1月末に新たに接合型トランジスタを発明します。トランジスタを作る際、半導体材料に不純物を混ぜp型とn型と呼ばれる2 つの型を作るのですが、点接触型トランジスタでは、これらが金の針を接続した金線による点でしかつながっていませんでした。それに対して、ショックレーが発明した接合型トランジスタでは、p型とn型のサンドイッチ構造になっていたのです。接合型トランジスタは性能が安定しており量産に適した構造をしていたため、現在の半導体にも共通するトランジスタの原型になりました。
トランジスタの発明はまさにその後の世界を大きく揺るがしていくことになります。
ショックレーが発明したトランジスタが大きな影響を及ぼした応用機器の一つに補聴器があります。それまでの補聴器は真空管を使っており、大きさはお弁当箱くらいあつたといいます。そのため補聴器を利用する人は、補聴器を入れる専用のカバンなどを持ち歩かなければいけませんでした。しかし、トランジスタの発明により、1953年にポケット型の補聴器が登場したのです。
しかし、ショックレーのトランジスタの活躍の場は、とても限られたものでした。補聴器やラジオなどにしか使えず、本来の狙いであった通信の分野ではあまり使えなかったのです。なぜならショックレーのトランジスタは融点の低いグルマニウムで作られており、熱に弱くてすぐに劣化してしまうからです。水(氷)の融点が0℃であることはよく知られていますが、グルマニウムの融点は938℃となっています。これは、その後半導体材料のメインとなっていくシリコンの1410℃や、工業製品として多く使われる鉄の1583℃に比べるとかなり低いのですが、それなのに発明当時のトランジスタにグルマニウムが使われた理由は、ほかの半導体材料に比べて加工しやすかったためでした。用途こそ限られてはいたものの、ショツクレーのグルマニウム製トランジスタは、19 55年にはのちのソニーとなる東京通信工業が開発したラジオに使われ、トランジスタラジオの名称で広く知られるようになりました。
トランジスタに次のターニングポイントが訪れたのは、ソニーのトランジスタラジオが開発される1年前の1954年のことでした。テキサス・インスツルメンツのゴードン・テイールがシリコン製のトランジスタを開発したのです。
テキサス・インスツルメンツは、1952年に石油探査会社の米国ジオフイジカルサービス(GSI)から分離して設立された、半導体ビジネスを行う企業です。当時すでに、半導体は大きなビジネスであると認識されていたのです。実際に1957年の時点で半導体市場は約1億ドル(当時の円相場で換算すると約360億円)の規模に到達していたといいます。ティールが開発したシリコン製トランジスタは、グルマニウム製トランジスタの弱点であった耐熱性や耐久性の問題を克服し、通信やラジオの市場を大きく動かし始めます。
このように1940年代後半に発明され、1950年代にさまざまな影響を及ぼしたトランジスタの時代には、3つのターニングポイントがありました。まずは1947年の点接触型トランジスタの発明、翌1948年の接合型トランジスタの発明、そして1954年のシリコン製トランジスタの発明です。最初のトランジスタを発明したショックレーとバーデイーン、ブラッテンの3人には、1956年にノーベル物理学賞が授与されました。
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