TOP > 半導体技術・産業動向の教養 > シャオミ(Xiaomi)、自社開発の先進的なモバイルチップ「Xring O1」の量産を開始したと発表
中国のスマートフォンメーカー、シャオミ(Xiaomi)が自社開発の先進的なモバイルチップ「Xring O1」の量産を開始したと発表しました。このチップは、同社の新製品「Xiaomi 15S Pro」スマートフォンおよび「Xiaomi Pad 7 Ultra」タブレットに搭載される予定で、シャオミは開発に135億元(約1.87億ドル)を投資し、今後10年間でさらに500億元以上をチップ設計に投資する計画を明らかにしています 。
この発表は、米国が中国に対して先端半導体技術の輸出規制を強化している中で行われました。米国は、スーパーコンピューターやAIに使用される先端半導体や製造装置、設計ソフトウェアなどの輸出を制限し、中国の先端半導体技術の発展を抑制しようとしています 。
シャオミの「Xring O1」チップが3nmプロセスで製造されているかどうかについては、公式には明言されていません。しかし、もし中国が自力で3nmチップの開発に成功したとすれば、これは米国の輸出規制を乗り越えた技術的なブレイクスルーであり、技術安全保障上の大きなリスクとなります。一方で、実際には3nmプロセスを使用していないにもかかわらず、そのように発表することで、国内外に対して技術力を誇示し、国家的な威信を高める戦略的な意図がある可能性も考えられます。
中国は、米国の規制に対抗するため、半導体の自給自足を目指して大規模な投資を行っています。例えば、半導体受託製造最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)は、北京市郊外に巨大な工場を建設中であり、ローエンドの半導体の量産化を進めています 。また、クラウドコンピューティングを活用して、米国のGPUへのアクセスを確保し、AI開発を継続するなど、規制の抜け穴を突いた対応も見られます。
米国は、これらの動きに対抗するため、AIチップの輸出規制を強化し、クラウドサービスを通じたチップの利用にも制限を加える方針を示しています 。また、HuaweiのAscendチップに対しても、米国の技術が使用されている可能性があるとして、世界中での使用を警告しています。
シャオミの発表が事実であれば、中国の半導体技術の飛躍的な進歩を示すものであり、米国の技術優位性に対する挑戦となります。一方で、事実でない場合でも、国内外に対する技術力の誇示や、国家的な威信の強化を目的とした戦略的な発表である可能性があります。いずれにせよ、米中間の半導体を巡る技術競争と安全保障上のリスクは、今後も注視が必要です。
リファレンス
[1] "Xiaomi has started mass producing self-developed Xring O1 chip" https://www.reuters.com/business/media-telecom/xiaomi-has-started-mass-producing-self-developed-xring-o1-chip-2025-05-20/
[2] "米国が先端半導体分野で中国への規制強化へ | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)" https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20231019.html
[3] "半導体巡る米中対立は長期戦に…規制外のローエンド量産化を達成した中国、次に狙うのは軍事用の高度化?:東京新聞 TOKYO Web" https://www.tokyo-np.co.jp/article/219912
[4] "米国の制裁が中国の半導体自立の野心をどのように後押ししているか" https://trt.global/nihongo/article/c106cdfcf0ce
[5] "China blasts new US rule banning use of Huawei's Ascend advanced computer chips" https://apnews.com/article/c7c1c82ac65f1b82024a7b07e8505c37
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