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1964年の半導体産業・技術分野の重要な動向

1964年は、半導体技術が大きく進化し、商業利用や産業応用が拡大した重要な年でした。特に、集積回路(IC)の普及、半導体メモリの進化、大型コンピュータへの応用、半導体製造技術の発展といったトピックが注目されました。


1. IBM System/360の発表とICの普及

1964年4月7日、IBMは「System/360」シリーズを発表。
これは、ICを本格的に採用した初の商用コンピュータであり、コンピュータ産業の歴史において画期的な出来事でした。

System/360と半導体技術の関係
●IBMは、それまでのコンピュータが使用していたディスクリートトランジスタ回路をICに置き換え、性能向上とコスト削減を実現。
●IBM System/360は、共通のアーキテクチャを持つモジュラー式コンピュータシリーズで、異なる用途や性能レベルに対応できる設計が採用された。
●IC技術の採用により、小型化・高速化・低コスト化が進み、コンピュータの普及を加速させた。

この出来事は、ICが商業的に成功する契機となり、以降のコンピュータ設計の基盤を築くこととなった。


2. MOSFET技術の発展と実用化の加速

1963年に発明されたMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が、1964年には実用化に向けた研究が進展。
MOSFETは、バイポーラトランジスタよりも低消費電力であり、集積回路に適していた。

1964年のMOSFET関連の進展
●フェアチャイルド・セミコンダクターやベル研究所が、MOSFETの改良を進め、信頼性や性能向上に成功。
●CMOS(Complementary MOS)技術の基礎的な研究が始まり、のちの低消費電力デバイスの開発につながった。
●MOS技術は、1960年代後半のDRAM(ダイナミックRAM)やマイクロプロセッサの登場に向けた布石となる。

この時期に進展したMOSFET技術は、後の半導体産業の主流となり、現代のプロセッサやメモリチップに欠かせない技術となった。


3. 半導体メモリの研究が進む

1964年には、半導体メモリの研究が本格化し、磁気コアメモリからの移行が進み始めた。特に、早期のSRAM(Static RAM)技術の開発が行われた。
●テキサス・インスツルメンツ(TI)やフェアチャイルドが、半導体メモリの試作・研究を強化。
●IBMなどの大手企業が、磁気コアメモリの代替技術として半導体メモリの可能性を模索。
●半導体メモリは、将来的にコンピュータの小型化・高速化を実現する基盤技術となる。

この時期の研究が、1970年代のDRAMやフラッシュメモリの開発へとつながる。


4. 半導体製造技術の進化

1964年は、半導体の製造プロセスが進化し、高品質なシリコンウェーハの生産技術が向上した年でもあった。

製造技術の主な進展
●フォトリソグラフィ技術の向上により、より微細な回路が形成可能に。
●エピタキシャル成長法の進展により、シリコンウェーハの品質が向上。
●酸化膜形成技術の改善により、MOSFETの性能と安定性が向上。

この技術革新により、ICの歩留まり(良品率)が向上し、製造コストが低下。結果として、ICの商業化が加速し、広範な分野で利用されるようになった。


5. アメリカと日本の半導体産業の競争激化

1964年には、アメリカ企業だけでなく、日本企業も半導体市場に参入し始め、競争が激化した。
●アメリカでは、フェアチャイルド、TI、モトローラ、IBMがIC技術をリード。
●日本では、日立、東芝、NEC、三菱電機などが半導体研究を強化。
●政府の支援を受けた日本企業が、半導体の研究開発に本格的に取り組み始める。
●トランジスタラジオや電子機器向けのIC開発が進み、日本のエレクトロニクス産業の成長が加速。

この競争が、のちの1970年代・1980年代における日本の半導体産業の台頭へとつながる。


まとめ

✅ IBM System/360の発表により、ICが商業的に本格採用され、コンピュータの普及が加速。
✅ MOSFET技術が発展し、低消費電力・高集積化に向けた基盤が整備される。
✅ 半導体メモリの研究が進み、磁気コアメモリからの移行が始まる。
✅ 半導体製造技術の進歩により、高品質なICの生産が可能になり、歩留まりが向上。
✅ アメリカと日本の半導体産業の競争が激化し、日本企業の技術力向上が進む。

1964年は、ICの商業化が進み、MOSFETや半導体メモリの基盤が確立された年だった。この技術革新が、後のマイクロプロセッサ・DRAM・CMOS技術の発展へとつながっていく。




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