TOP > 半導体年表 > 1987年の半導体産業・技術分野の重要な動向
1987年の半導体産業は、技術革新、産業構造の変化、米国と日本の貿易摩擦、そして新たなプロセス技術の進展によって大きな影響を受けました。この年は、半導体製造技術の進歩と、業界の競争環境が大きく変化する転換点となりました。
1. 日米半導体協定の締結とその影響
1980年代後半は、日本の半導体産業が急成長し、米国との間で貿易摩擦が深刻化した時期です。1987年には、日米間の半導体貿易問題を解決するため、「日米半導体協定」が締結されました。
協定の内容
●日本の市場における外国製半導体(主に米国製)のシェアを20%以上にすることを目標とした。
●日本の半導体メーカーが不当な価格で製品を販売しないよう監視することが求められた(ダンピング防止)。
●米国政府の監視の下、日本市場の開放が進められることとなった。
影響
この協定により、日本の半導体メーカー(NEC、東芝、日立、三菱電機など)は、価格政策の見直しや輸出戦略の変更を余儀なくされました。一方で、米国の半導体メーカー(Intel、Motorola、Texas Instruments など)は、日本市場への進出機会を得ました。しかし、協定の影響で日本企業の競争力が低下し、後に韓国・台湾の半導体メーカーが台頭する契機ともなりました。
2. DRAM市場の競争激化
1987年の半導体市場において、DRAM(ダイナミックRAM)市場は激しい競争状態にありました。
主要な動向1Mbit(メガビット)DRAMの本格量産開始
●日本企業(NEC、東芝、日立)が1Mbit DRAMの量産を加速。
●米国企業(IBM、Texas Instruments)も1Mbit DRAM市場に参入。
価格競争の激化
●日本企業が大量生産によるコスト削減を進め、米国企業との競争がさらに厳しくなった。
●韓国のサムスン電子もDRAM市場に本格参入し、後の躍進の土台を築く。
この競争により、米国のDRAMメーカーは採算性の低下に直面し、徐々に撤退を始めることになります。
3. 半導体プロセス技術の進展
1987年は、半導体の製造技術が進化し、より高集積な回路が実現されました。
主要な技術革新1μm(ミクロン)プロセス技術の確立
●主要メーカーが1μm(1000nm)以下の微細加工技術を実用化し、さらなる微細化へ進む基盤を確立。
●フォトリソグラフィ技術の進化により、トランジスタの微細化が加速。
CMOS技術の発展
●従来のNMOSやPMOSに比べて低消費電力なCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)が主流に。
●Intelや日本のメーカーが、CMOS技術を活用したマイクロプロセッサの開発を加速。
4. マイクロプロセッサ市場の変化
1987年には、Intelが新世代のプロセッサを投入し、パソコン市場の拡大を支えました。
主要な動向
Intel 80386の市場拡大
●1985年に発表されたIntel 80386(32ビットプロセッサ)が本格的に市場に浸透。
●PC/AT互換機(IBM PC互換機)が普及し、80386を採用するメーカーが増加。
●32ビットアーキテクチャの普及により、パーソナルコンピュータの性能が大幅に向上。
Motorola 68030の発表
●Motorolaが68030プロセッサを発表し、Apple Macintoshやワークステーション市場向けに採用が進む。
●特にMacintosh IIシリーズで採用され、Appleの製品ラインナップが強化。
5. 韓国・台湾の半導体産業の台頭
1987年は、日本と米国が半導体市場で激しく競争していた一方で、韓国や台湾の半導体メーカーが成長し始めた年でもありました。
韓国(サムスン電子、LG半導体)
●サムスン電子が1Mbit DRAMの量産に成功し、国際市場で競争力を高める。
●韓国政府の支援を受け、半導体産業への投資を拡大。
●LG半導体(後のSK Hynix)もメモリ市場に参入し、DRAM技術を強化。
台湾(TSMCの設立)
●1987年に台湾の半導体受託生産(ファウンドリ)企業であるTSMC(台湾積体電路製造 / Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)が設立。
●世界初の純粋なファウンドリ企業としてスタートし、のちに半導体業界の構造を大きく変える存在に。
●TSMCの設立は、半導体製造を自社で行わずに設計に特化するファブレス企業(例:Qualcomm、NVIDIA)が成長する土台を築いた。
6. 半導体産業の企業動向
1987年には、半導体業界の大手企業がそれぞれ戦略を強化しました。
●Intel: 80386プロセッサの普及に注力し、PC市場でのリーダーシップを確立。
●NEC: DRAM市場での競争力を維持しながら、ASIC(特定用途向け集積回路)市場にも進出。
●Texas Instruments: DSP(デジタル信号処理)チップ市場を開拓し、新たな成長分野を模索。
●IBM: メインフレーム市場向けの半導体技術を強化し、先端製造技術の開発を推進。
まとめ
1987年の半導体業界は、日米半導体協定の締結による市場変化、DRAM市場の競争激化、プロセス技術の進歩、韓国・台湾企業の台頭など、多くの重要な出来事があった年でした。また、TSMCの設立によって、ファウンドリビジネスという新たな産業モデルが誕生し、後の半導体産業に大きな影響を与えました。
この年の動きは、1980年代後半から1990年代の半導体産業の構造変化を決定づける要因となりました。
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