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2011年の半導体産業・技術分野の重要な動向

2011年の半導体産業・技術分野の主要動向については、以下の通りです。

2011年の半導体産業は、自然災害による供給網の混乱、スマートフォン市場の急成長、プロセス技術の微細化、メモリ市場の変化など、多くの重要な出来事に直面しました。これらの動向が、半導体業界全体の競争構造や技術革新に大きな影響を与えました。


1. 東日本大震災による半導体供給網の混乱と影響

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、世界の半導体供給網に深刻な影響を与えました。日本は当時、半導体製造に欠かせない材料・部品の主要供給国であり、震災による工場の操業停止や物流の混乱が世界的な半導体供給不足を引き起こしました。

特に影響を受けたのは以下の分野です。

シリコンウェハ供給
震災の影響で、日本のシリコンウェハ供給企業(SUMCOや信越化学工業など)の工場が一時的に操業停止。これにより、世界中の半導体メーカーが生産調整を余儀なくされました。

フォトレジスト・特殊ガス供給
半導体の製造プロセスに欠かせないフォトレジストやエッチング用ガスの供給も滞り、TSMCやSamsungなどのファウンドリ事業にも影響を与えました。

車載半導体不足
ルネサスエレクトロニクスの那珂工場が甚大な被害を受け、車載向けMCU(マイクロコントローラ)の供給が大幅に減少。これにより、トヨタやホンダなどの自動車メーカーが生産調整を行う事態となりました。

震災を契機に、世界の半導体メーカーはサプライチェーンの見直しを迫られ、日本依存を低減する動きが加速しました。


2. スマートフォン市場の爆発的成長とモバイル向け半導体の拡大

2011年は、スマートフォン市場が急拡大した年でもありました。特に、Appleの「iPhone 4S」やSamsungの「Galaxy S II」などの人気機種が市場を席巻し、世界のモバイル端末市場が大きく成長しました。

ARMベースのプロセッサの台頭
スマートフォンの需要拡大に伴い、ARMアーキテクチャを採用したプロセッサ(SoC)が急成長しました。Qualcommの「Snapdragon」、Samsungの「Exynos」、NVIDIAの「Tegra」などが市場に投入され、高性能化と低消費電力化が進みました。

モバイル向け半導体の需要増加
モバイルデバイスの性能向上に伴い、低消費電力なLPDDR(Low Power DDR)メモリやNANDフラッシュの需要も大きく伸びました。

この年のスマートフォン市場の拡大は、半導体メーカーにとって新たな成長機会となり、モバイル向け半導体の開発競争が本格化しました。


3. 28nmプロセスの商業化とFinFET技術の進展

2011年には、半導体の微細化がさらに進み、主要なファウンドリ企業が28nmプロセスの量産を開始しました。

TSMC、GlobalFoundries、Samsungが28nmプロセスの商業化を推進
TSMCはQualcommやNVIDIA向けの28nmチップを量産開始し、GlobalFoundriesやSamsungも同様に28nmプロセスを導入。これにより、消費電力を抑えつつ高性能なチップが登場しました。

IntelのFinFET技術(3Dトランジスタ)発表
Intelは2011年に22nmプロセスを採用し、従来の平面型トランジスタの限界を克服するためにFinFET(3Dトランジスタ)技術を導入。これにより、リーク電流を抑えつつ性能向上を実現し、今後の半導体技術の主流となる方向性を示しました。


4. DRAM市場の競争激化とエルピーダメモリの苦境

2011年のDRAM市場では、Samsung、SK Hynix、Micronといった大手メーカーが低コストで生産能力を拡大する一方、日本のエルピーダメモリは経営難に陥りました。

価格競争の激化
DRAM価格の下落により、エルピーダは価格競争に敗れ、資金繰りが悪化。競争力のある製品を開発していたものの、財務的な問題により存続が危ぶまれる状況となりました。

その後の展開
翌2012年にはエルピーダが経営破綻し、米国Micron Technologyに買収されることになります。これにより、日本のDRAMメーカーは事実上消滅しました。


5. NANDフラッシュ市場の拡大とSSDの普及

2011年はNANDフラッシュメモリの市場が大幅に拡大し、SSD(ソリッドステートドライブ)の採用が急速に進みました。

データセンター市場の拡大
クラウドサービスの普及に伴い、データセンター向けのSSD需要が増加。Intel、Samsung、Toshiba(現キオクシア)などが高密度NANDフラッシュを開発し、データセンター市場への展開を強化しました。

コンシューマ向けSSDの低価格化
SSDのコストが徐々に下がり、コンシューマ向けPCでもHDDに代わってSSDが採用されるケースが増加しました。


6. IntelのSandy Bridgeマイクロアーキテクチャの登場

Intelは2011年に「Sandy Bridge」マイクロアーキテクチャを採用した第2世代Coreプロセッサを発表しました。

CPUとGPUの統合
グラフィックス機能(Intel HD Graphics)をCPUに統合し、統合型GPUの性能が大幅に向上。これにより、エントリークラスのPCでは外部GPUを不要とする流れが加速しました。

市場での成功
ノートPC市場を中心に高い人気を誇り、IntelのCPUシェア拡大に貢献しました。


まとめ

2011年は、東日本大震災による供給網の混乱、スマートフォン市場の爆発的成長、半導体プロセス技術の進展、メモリ市場の激変など、半導体業界にとって多くの転換点となった年でした。特に、FinFET技術の登場や28nmプロセスの商業化は、その後の半導体技術の発展に大きな影響を与えました。

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