TOP > 半導体年表 > 1986年の半導体産業・技術分野の重要な動向
1986年の半導体業界では、技術革新や国際競争の激化が進み、特に米国の半導体政策の転換、日本のDRAM市場支配、微細化技術の進展が大きなテーマとなりました。
1. 日米半導体協定(U.S.-Japan Semiconductor Agreement)
1980年代半ば、日本の半導体メーカー(NEC、東芝、日立、富士通など)がDRAM市場を中心に急成長し、特にメモリ市場で日本が世界シェアの約80%を占めるまでになりました。これに対し、米国政府と半導体業界(インテル、モトローラ、テキサス・インスツルメンツなど)は、日本企業の市場支配を問題視し、日本政府との間で「日米半導体協定」が締結されました(1986年9月)。
日米半導体協定の内容
●日本市場の開放:外国(主に米国)企業の半導体が日本市場で公正に販売されるようにする。
●ダンピング防止:日本メーカーが米国市場で半導体を不当に安く販売しないように価格監視を強化。
●公正競争の確保:日本政府による半導体産業への補助金や優遇措置の透明化。
この協定は、日本企業にとっては一定の制約を生みましたが、同時に米国半導体産業の復活のきっかけとなり、のちの米国の半導体復権へとつながる重要な転換点となりました。
2. SEMATECH(米国の半導体研究機関)の設立準備
日米半導体協定と並行して、米国政府と企業は日本に対抗するために国策として半導体産業の強化を進めました。その一環として、1986年に「SEMATECH(Semiconductor Manufacturing Technology)」の設立が計画され、翌1987年に本格的に稼働しました。
SEMATECHの目的
●米国の半導体製造技術の向上
●民間企業と政府の共同研究
●次世代半導体プロセスの開発と製造技術の改善
SEMATECHの設立は、米国半導体産業の再生に大きく貢献し、後のインテルのマイクロプロセッサ市場での支配強化につながりました。
3. DRAM技術の進展とメモリ市場の変化
1986年は、1Mbit DRAM(メガビットDRAM)の量産が本格化した時期であり、次世代の4Mbit DRAMの開発が進められていました。
1Mbit DRAMの特徴
●東芝やNECなどの日本企業が市場をリード
●従来の256Kbit DRAMと比べてストレージ容量が4倍
●微細化技術(CMOSプロセスの進化)による低消費電力化
●日本メーカーの生産効率の高さが競争力を強化
この時期、米国企業はメモリ市場での競争力を失い、マイクロプロセッサなどの分野にシフトする戦略を取るようになりました。
4. CMOS技術の普及とプロセッサ市場の変化
1986年は、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)技術が本格的に普及し始めた年でもありました。
CMOS技術の特徴と影響
●低消費電力:従来のNMOS技術と比べて消費電力が大幅に削減
●高集積度:微細化が進み、大規模集積回路(VLSI)への応用が加速
●PC向けプロセッサの進化:特にインテルの386プロセッサ(1985年発表)の市場導入が進み、IBM PC互換機の性能向上に貢献
この技術革新により、半導体の主要な用途が従来のメインフレーム向けからPC向けへとシフトしていきました。
5. ファブレス半導体企業の台頭
1980年代半ばには、半導体設計のみを行うファブレス企業が登場し始めました。特に1986年には、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が設立され、半導体製造のアウトソーシング(ファウンドリモデル)が本格化する準備が整いました。
ファブレス&ファウンドリモデルの特徴
●設計専門企業(ファブレス)が登場(例:NVIDIA、クアルコム)
●製造専門企業(ファウンドリ)としてTSMCがスタート
●半導体製造の分業化が加速し、低コストでの生産が可能に
この流れは1990年代以降に本格化し、半導体業界の新たなビジネスモデルとして定着しました。
6. まとめ
1986年の半導体業界は、日本のDRAM市場支配、米国の半導体政策の転換、微細化技術の進展という3つの大きな動向に特徴付けられました。
✅日米半導体協定の締結により、日本メーカーの圧倒的な優位性が牽制され、米国メーカーの巻き返しが始まる。
✅SEMATECHの設立準備が進められ、米国の半導体産業再生の礎となる。
✅1Mbit DRAMの本格量産が進み、日本企業のメモリ市場支配がさらに強化。
✅CMOS技術の普及により、低消費電力化と高性能化が進む。
✅ファブレス&ファウンドリモデルが登場し、半導体産業の新たなビジネスモデルが誕生。
この時期の動向は、現在の半導体産業の発展に大きな影響を与え、米国・日本・台湾それぞれの半導体戦略の方向性を決定づけるものとなりました。
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