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フォトリソグラフィ技術

半導体のフォトリソグラフィ技術は、半導体関連技術の中でも重要なものです。その概要を解説します。


1. フォトリソグラフィ技術の概要

フォトリソグラフィ(Photolithography)は、半導体製造において微細な回路パターンをシリコンウエハ上に形成する技術であり、現在の集積回路(IC)製造の中核を担っています。この技術は、フォトマスクを通して紫外線(UV)などの光をレジスト(感光性樹脂)に露光し、化学的な処理によって微細なパターンを転写するプロセスです。


2. フォトリソグラフィの基本プロセス

フォトリソグラフィは以下の主要なステップで構成されます。

① ウエハの表面処理
シリコンウエハの表面を平坦化し、酸化膜や反射防止膜を形成します。
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② レジスト塗布
レジスト(感光性ポリマー)をスピンコート技術を用いてウエハに均一に塗布し、乾燥させます。
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③ 露光
フォトマスクを通して光(通常は紫外線、EUVなど)を照射し、レジストの化学構造を変化させます。
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④ 現像
露光後、化学薬品を用いて不要なレジストを除去し、回路パターンを形成します。
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⑤ エッチング
露出したシリコンや酸化膜をプラズマや化学薬品でエッチングし、基板に回路パターンを刻みます。
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⑥ レジスト除去
不要になったレジストを剥離し、次のプロセスへ進みます。


3. フォトリソグラフィの光源技術

フォトリソグラフィでは使用する光の波長が解像度に大きく影響を与えます。微細化の進展に伴い、より短い波長の光が求められています。
世代光源波長
i線水銀ランプ365 nm
KrFエキシマレーザー248 nm
ArFエキシマレーザー 193 nm
ArF液浸液浸リソグラフィ193 nm(実効分解能向上)
EUV極端紫外線 13.5 nm
EUVリソグラフィ(Extreme Ultraviolet Lithography)は、現在最先端の技術で、3nm世代のプロセスに使用されます。短波長を活用することで、より微細な回路パターンを形成できます。


4. 関連する技術と概念

① 液浸リソグラフィ
ArF液浸リソグラフィは、露光時にウエハとレンズの間に高屈折率の液体(主に純水)を挟むことで、波長の短縮効果を得て解像度を向上させる技術です。

② ダブルパターニング
1回の露光で得られる解像度の限界を克服するために、同じウエハに2回以上の露光を行い、より微細なパターンを形成する技術です。

③ 位相シフトマスク(PSM)
フォトマスク上で光の位相を制御し、解像度を向上させる技術です。

④ マルチビーム電子線リソグラフィ
EUVの代替技術として、電子ビームを用いた直接描画方式が研究されていますが、スループット(処理速度)が課題となっています。


5. フォトリソグラフィの課題と今後の展望

フォトリソグラフィ技術の微細化は続いていますが、いくつかの課題も存在します。

課題
- EUV露光装置の高コスト(1台あたり数百億円)
- EUVマスクの欠陥制御
- EUV用レジストの改良
- 微細化による歩留まりの低下

今後の展望
- High-NA EUVリソグラフィ(開口数を拡大し、さらなる微細化を実現)
- 次世代リソグラフィ技術(ナノインプリント、X線リソグラフィなど)
- 新材料の開発(高性能レジスト、グラフェンマスクなど)


6. まとめ

フォトリソグラフィ技術は半導体製造の鍵を握る技術であり、微細化の進展とともに光源やレジスト材料の革新が求められています。特にEUVリソグラフィの発展が、次世代の半導体技術の主流となっています。今後もさらなる微細化が進む中で、コスト削減や生産性向上のための新技術が求められています。




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