TOP > 半導体技術・産業動向の教養 > 中国の半導体産業における主要な企業

中国の半導体産業における主要な企業

半導体生産のみならず、半導体技術開発における中国のプレゼンスが高まったことで、世界は脅威にさらされることになった。そもそもが欧米、日本の対中政策の失敗の結果であり、共産主義・計画経済の非民主主義国である中国に対して、あたかも「民主主義・自由主義陣営」の国であるかのような待遇をしたことで、中国が成長したことがもたらした当然の結果でしょう。元来、中国は民主主義国ではないため、一部の集団によって恣意的に運営され、対外的な侵略行為をはじめとした近代国家の逸脱行為を修正するメカニズムが国内に備わっていないのです。そのような前近代的な独裁国家が強大な力を持った時、どのような行動をするかは火を見るより明らかでしょう。欧米・日本にとって致命的な脅威に中国が成長するのは当然の理だといえるでしょう。

中国の半導体産業における主要企業について、事業内容、支配体制、事業展開に着目して整理します。


1. 中芯国際集成電路製造(SMIC, Semiconductor Manufacturing International Corporation)

概要
●設立年:2000年
●本社所在地:中国・上海
●事業内容:ファウンドリ(半導体受託製造)
●主要技術:14nmプロセス(7nm試作中)

支配体制
●国有資本の影響が強く、中国政府の支援を受けている。
●主要株主:中国政府系ファンド(国家集成電路産業投資基金、大基金)や上海市政府など。

事業展開
●中国最大の半導体ファウンドリであり、世界でもTSMC、Samsung、GlobalFoundriesに次ぐ規模を持つ。
●14nmプロセスの量産に成功し、7nmプロセスの開発を進めているが、最先端技術では台湾や韓国に遅れを取っている。
●米国の輸出規制による影響を受けているが、中国国内市場の成長と政府支援を背景に事業拡大を進めている。


2. 華為技術有限公司(Huawei Technologies)

概要
●設立年:1987年
●本社所在地:中国・深圳
●事業内容:通信機器、スマートフォン、半導体開発
●主要技術:SoC(システム・オン・チップ)、通信向け半導体

支配体制
●非上場企業であり、従業員持株制度を採用している。
●実質的な支配権は創業者の任正非および経営陣にあるが、政府との関係が深いと指摘されている。

事業展開
●自社開発の半導体ブランド「HiSilicon」を展開し、スマートフォン用チップ(Kirinシリーズ)を開発。
●米国の制裁により、TSMCとの製造契約が制限され、半導体調達に苦戦している。
●2023年には、自社設計の7nmプロセスのチップを搭載したスマートフォン「Mate 60 Pro」を発表し、技術自立を進めている。


3. 長江存儲科技(YMTC, Yangtze Memory Technologies)

概要
●設立年:2016年
●本社所在地:中国・武漢
●事業内容:NAND型フラッシュメモリの開発・製造
●主要技術:Xtacking技術による3D NANDメモリ

支配体制
●親会社は国有企業の紫光集団(Tsinghua Unigroup)。
●中国政府の支援を受け、国家集成電路産業投資基金(大基金)が出資。

事業展開
●3D NANDフラッシュメモリの開発を進め、176層のNANDチップを量産。
●米国の輸出規制により、先端製造装置の調達に課題を抱えるが、中国国内市場への供給を拡大。
●競争相手はSamsung、SK Hynix、Micronなど。


4. 紫光集団(Tsinghua Unigroup)

概要
●設立年:1988年
●本社所在地:中国・北京
●事業内容:半導体設計・製造、メモリ開発、通信チップ、クラウドコンピューティング

支配体制
●中国政府の支援を受ける国有企業。
●傘下にYMTCやUnisoc(携帯電話向け半導体メーカー)を抱える。

事業展開
●2020年に経営破綻したが、中国政府の支援のもと再編。
●半導体設計、メモリ製造、5G向けチップ開発などを推進し、中国の半導体自給率向上を目指す。


5. 兆易創新(GigaDevice)

概要
●設立年:2005年
●本社所在地:中国・北京
●事業内容:フラッシュメモリ、マイコン、NOR型メモリ開発

支配体制
●民間企業であり、上場企業。
●中国政府の支援を受けつつ、商業ベースでの成長を志向。

事業展開
●NAND型・NOR型フラッシュメモリ市場で急成長。
●米国の制裁により、半導体設計ソフトや製造装置の調達に影響が出る可能性がある。
●産業向けIoT、5G向けのマイコン・メモリチップの開発に注力。


6. 比亜迪半導体(BYD Semiconductor)

概要
●設立年:2004年
●本社所在地:中国・深圳
●事業内容:車載用半導体、電力半導体、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)

支配体制
●親会社は電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)。
●2022年に独立企業として分社化。

事業展開
●中国国内のEV市場の成長を背景に、車載用半導体を強化。
●IGBT(電力制御用半導体)市場で急成長し、Teslaなどの競争相手に対抗。
●中国政府のEV支援政策を活かし、電力半導体分野でシェア拡大を狙う。


まとめ

中国の半導体企業は、政府の支援を受けながら急速に成長しているが、依然として米国の技術制裁や製造装置・設計ソフトの依存という課題を抱えている。今後の展開としては、以下のポイントが注目される。

1. 半導体自給率の向上
SMICやYMTCが最先端製造技術を確立できるかが鍵。
2. AI・5G向けチップの強化
HuaweiやUnisocが先端技術の開発を継続。
3. EV・電力半導体の成長
BYD SemiconductorがIGBT市場で優位に立つ可能性。
4. 米国の制裁への対応
中国政府のさらなる資金投入や装置国産化の進展が求められる。

中国の半導体産業は、今後10年間で技術的な独立をどこまで進められるかが重要なテーマとなる。





[オススメ記事]フォトリソグラフィ技術
[オススメ記事]1985年の半導体産業・技術分野の重要な動向