TOP > 半導体年表 > 1985年の半導体産業・技術分野の重要な動向

1985年の半導体産業・技術分野の重要な動向

1985年の半導体業界は、技術革新の加速、メモリ市場の暴落(DRAMショック)、日本企業の台頭、RISCプロセッサの発展、半導体製造技術の進化など、多くの重要な動きがありました。


1. DRAMショック(メモリ価格の暴落)


背景
1985年はDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)市場における大暴落が発生した年です。これを「DRAMショック」と呼びます。

1980年代前半、日本の半導体メーカー(NEC、日立、東芝など)がDRAMの生産技術を向上させ、アメリカ市場に大量に輸出しました。これにより、供給過多が発生し、DRAM価格が急落しました。

影響
●アメリカの半導体メーカー(Intel、TI、Motorolaなど)が大きな打撃を受ける
●IntelはDRAM事業から撤退し、マイクロプロセッサ事業に集中する決断をする
●日本メーカーの市場支配力が強まり、世界のDRAM市場を席巻
●アメリカ政府が日本の半導体産業に対抗し、のちの「日米半導体協定」(1986年)につながる

ポイント
DRAM価格の暴落により、Intelはメモリ事業を捨て、CPU開発に集中する転換点となった。


2. RISCプロセッサの発展


Sun MicrosystemsがSPARCアーキテクチャを開発
1985年には、Sun MicrosystemsがSPARC(Scalable Processor Architecture)の設計を開始しました。SPARCはRISC(Reduced Instruction Set Computer)の概念を取り入れたプロセッサで、高性能で低消費電力な設計が特徴です。

RISCの優位性
●命令セットをシンプル化し、クロックサイクルあたりの実行効率を向上
●パイプライン処理を最適化し、並列処理能力を強化
●高クロック動作に適した設計

この流れは後に、IBMのPOWERアーキテクチャ(1990年)や、DECのAlpha(1992年)など、ワークステーション・サーバー向けプロセッサ開発の基盤となりました。

ポイント
SPARCアーキテクチャの開発が始まり、RISCプロセッサの実用化が進んだ。


3. CMOS技術の進化と普及

1985年には、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)技術の普及が進み、多くの半導体製品がCMOSプロセスで製造されるようになりました。

CMOS技術のメリット
●低消費電力で発熱が少ない
●スケーラビリティが高く、微細化が容易
●電力効率が向上し、モバイル機器やバッテリー駆動デバイスに最適

この技術革新により、バッテリー駆動のデバイス(ノートPC、携帯機器、ゲーム機など)に適した半導体チップが開発されるようになりました。

ポイント
CMOS技術が普及し、低消費電力な半導体製品が主流となった。


4. 80386プロセッサの発表

Intelが次世代x86 CPUを開発
1985年10月、Intelは32ビットのx86プロセッサ「Intel 80386」(i386)を発表しました。

80386の特徴
●32ビットアーキテクチャを採用
●仮想メモリ管理機能を搭載
●マルチタスク処理に対応
●クロック周波数は12MHz〜33MHz(後のモデル)
●最大4GBのメモリ空間をサポート

これにより、PCの処理能力が大幅に向上し、WindowsやUnix系OSの発展に貢献しました。

ポイント
Intel 80386が発表され、PCの高性能化が進んだ。


5. 日本半導体企業の台頭

日立、NEC、東芝が世界市場で急成長
1985年の時点で、日本の半導体メーカー(NEC、日立、東芝など)は世界のDRAM市場で50%以上のシェアを占めるようになりました。

日本メーカーの強み
●微細加工技術の向上(1μmプロセス技術の量産化)
●品質管理の徹底(歩留まりの向上)
●大量生産によるコスト削減

この成功により、日本の半導体メーカーはDRAMだけでなく、ロジックIC、マイクロコントローラなどの分野でも強みを発揮するようになりました。

ポイント
日本の半導体企業が世界市場でリーダーシップを握るようになった。


6. 半導体製造技術の進化

1985年には、0.8μm(800nm)プロセス技術の開発が進み、半導体の微細化が加速しました。

0.8μmプロセス技術の影響
●トランジスタ密度が向上し、高性能化が進む
●消費電力が低減し、モバイルデバイスへの応用が広がる
●製造コストの削減につながる

この技術は、のちに1Mbit DRAMの本格量産や、プロセッサの高集積化に貢献しました。

ポイント
0.8μmプロセス技術の開発により、半導体の高性能化と低消費電力化が進んだ。


まとめ

✅ DRAMショックが発生し、Intelはメモリ事業から撤退し、CPU開発に集中する転換点となった。
✅ Sun MicrosystemsがSPARCアーキテクチャの開発を開始し、RISCプロセッサの発展が加速した。
✅ CMOS技術の普及により、低消費電力な半導体製品が主流となった。
✅ Intel 80386が発表され、PCの高性能化が進んだ。
✅ 日本の半導体企業(NEC、日立、東芝など)がDRAM市場を支配し、世界のリーダーとなった。
✅ 0.8μmプロセス技術の開発が進み、半導体の微細化と高性能化が促進された。








[オススメ記事]中国の半導体産業における主要な企業
[オススメ記事]1984年の半導体産業・技術分野の重要な動向