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2023年の半導体産業・技術分野の重要な動向

2023年の半導体産業と技術分野における重要な動向は以下の通りです。

1. 市場規模の変動

2023年、世界の半導体市場は巣ごもり需要の反動などの影響で一時的に縮小しましたが、2024年には再び増加に転じ、2022年を上回る6,112億米ドルに達すると予測されています。

1. 世界的な半導体需要の高まり
新型コロナウイルス感染症の影響でデジタル化が加速し、リモートワークやオンライン教育の普及に伴い、パソコンやタブレットなどの需要が増加しました。また、5G通信やIoT(モノのインターネット)、自動運転技術の進展により、これらの分野で使用される半導体の需要も増大しました。

2. 半導体供給不足の影響
2020年以降、半導体の供給不足が深刻化し、自動車産業をはじめとする多くの業界で生産調整が行われました。この供給不足は、2023年においても完全には解消されておらず、供給と需要のバランスが市場規模に影響を与えています。

3. 地政学的リスクとサプライチェーンの再構築
米中間の貿易摩擦やウクライナ情勢などの地政学的リスクが高まる中、各国は半導体の安定供給を確保するため、サプライチェーンの再構築や国内生産能力の強化を進めています。これにより、各国での投資が活発化し、市場規模の変動要因となっています。


2. 日本の半導体産業再興への取り組み

日本政府は、半導体産業の再興を目指し、2023年に「半導体・デジタル産業戦略」を策定しました。この戦略では、先端半導体の生産施設整備や研究開発への大規模な投資が盛り込まれています。

日本政府は、デジタル社会の実現と経済安全保障の強化を目指し、2021年6月に「半導体・デジタル産業戦略」を策定しました。その後、世界情勢の変化や技術革新の進展を受け、2023年6月に同戦略の改定版を公表しています。この戦略は、半導体、情報処理基盤、高度情報通信インフラ、蓄電池などの分野における政策の方向性を示しています。

1. 戦略改定の背景と目的
2021年の初版策定以降、ロシアによるウクライナ侵略や世界的なインフレ、エネルギー価格の高騰、サプライチェーンの混乱など、国際情勢が大きく変化しました。これらの課題に対応するため、デジタル化やグリーン化の推進が急務となり、戦略の改定が行われました。

2. 半導体分野の取り組み
日本は、最先端半導体の研究開発と生産能力の強化を目指しています。具体的には、研究開発プラットフォームとして「最先端半導体技術センター(LSTC)」を設立し、量産拠点として「ラピダス株式会社」への支援を行っています。また、米国の国立半導体技術センター(NSTC)との協力を強化し、研究開発ロードマップの共同策定や人材育成に取り組んでいます。

3. 情報処理基盤と高度情報通信インフラ
デジタル産業の基盤強化として、クラウドやサイバーセキュリティ、5G、データセンターなどの高度情報通信インフラの整備が進められています。これにより、全ての産業のデジタル化を支え、地方創生や少子高齢化といった社会課題の解決を図っています。

4. 蓄電池分野の強化
グリーン成長戦略の一環として、蓄電池の開発・生産体制の強化が掲げられています。電動車や再生可能エネルギーの普及に伴い、蓄電池の需要が高まっており、国内生産能力の拡大や技術革新が推進されています。

5. 横断的政策と今後の展望
人材育成、研究開発支援、国際連携、サプライチェーンの強靭化など、分野を超えた政策が展開されています。特に、日米間の協力強化や、生成AIの開発に必要な最先端半導体の利用可能性拡大など、国際的な連携が重視されています。

この戦略を通じて、日本はデジタル産業の競争力を高め、経済安全保障の確保と持続可能な社会の実現を目指しています。


3. 主要企業の投資と生産計画

台湾積体電路製造(TSMC)は、日本における拠点(JASM)に対し、約200億ドルの投資を計画しています。第1工場は2024年12月の出荷開始を予定しており、第2工場は2024年末に建設を開始し、2027年の稼働を目指しています。
2023年の半導体産業における主要企業の投資と生産計画について、以下の情報が報告されています。

1. 台湾積体電路製造(TSMC)
TSMCは熊本県に新工場を建設中で、2024年の稼働開始を予定しています。この投資により、九州7県の2023年度設備投資額は前年度比61.7%増の1兆105億円と、1956年の調査開始以来最大の伸び率を記録しました。

2. インテル
米国の「CHIPSおよび科学法」に基づき、インテルは今後5年間で1,000億ドルを超える対米投資を計画しています。2024年3月には、米国商務省から最大85億ドルの助成が発表されました。

3. キオクシア
キオクシアは第7製造棟の新設計画を発表し、これに伴い半導体材料や製造装置メンテナンス、産業ガス供給、物流などの関連産業で400億円を超える新規投資や増産計画が相次いでいます。

4. 九州地域の設備投資
TSMCの熊本工場建設により、九州地域では半導体関連の大型投資計画が進行中で、九州全体で最大約20.1兆円(付加価値ベースで約9.4兆円)の波及効果が期待されています。

これらの投資計画は、半導体産業の生産能力拡大と地域経済への大きな波及効果をもたらすと期待されています。


4. 量子技術分野の進展

2023年、日本国内で超伝導回路方式の国産量子コンピュータ実機が稼働を開始しました。さらに、冷却中性原子方式の実機開発も産学官連携で推進されており、量子技術分野での研究開発が活発化しています。

1. 理化学研究所の初号機公開とクラウドサービス開始
2023年3月、理化学研究所(理研)は、国産初の64量子ビット超伝導量子コンピュータを公開しました。 この初号機は、量子ビット数の拡張性に優れた「二次元集積回路」と「垂直配線パッケージ」を採用しており、クラウドを通じて外部からの利用が可能となっています。

2. 富士通との共同開発による2号機の提供開始
理研と富士通は、2021年に共同で設立した「理研RQC-富士通連携センター」において、初号機の開発ノウハウを基に新たな64量子ビットの超伝導量子コンピュータを開発しました。この2号機は、富士通が開発した世界最大級の40量子ビット量子シミュレータと連携可能なハイブリッド量子コンピューティングプラットフォームとして、2023年10月5日より企業や研究機関向けに提供が開始されました。

3. 大阪大学での3号機稼働とクラウドサービス開始
大阪大学では、国産部品のテストベッドとして開発を進めてきた超伝導量子コンピュータ国産3号機が稼働を開始しました。この3号機は、クラウドサービスを通じて提供され、量子ソフトウェアコンソーシアムに参画する42機関との共同研究や、量子コンピュータのユースケース探索などに活用されています。

これらの取り組みにより、日本国内での超伝導回路方式の量子コンピュータ開発とその実用化が大きく前進し、産業界や学術界における量子計算の研究開発が加速しています。

これらの動向は、2023年の半導体産業と技術分野における重要なトピックとして注目されています。


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