TOP > 半導体技術・産業動向の教養 > GlobalFoundriesの概要
1. はじめに
GlobalFoundries(以下、GF)は、世界有数の半導体ファウンドリ企業の一つであり、特にカスタムソリューションと特殊プロセス技術に注力している。TSMCやSamsungといった競争相手と異なり、最先端のプロセス技術開発に特化するのではなく、成熟プロセスとカスタム半導体市場において独自の地位を確立している。ここでは、GFの概要、事業内容、技術開発、研究開発体制、経営方針、そして国際的投資状況について詳細に分析する。
2. 会社概要
GFは2009年にAMD(Advanced Micro Devices)から分社化され、アブダビ政府の投資会社であるMubadala Investment Companyが出資する形で設立された。本社はアメリカのニューヨーク州マルタにあり、ドイツ、シンガポールなどにも主要な製造拠点を持つ。GFは純粋なファウンドリ(半導体製造専門企業)として、世界中の顧客に半導体製造サービスを提供している。
主要拠点
- 米国:ニューヨーク州マルタ、バーモント州エセックスジャンクション
- ドイツ:ドレスデン
- シンガポール:ウッドランズ
3. 事業内容
GFの事業は主に以下の3つの分野に分かれる。
3.1 半導体ファウンドリ事業
GFは、ファウンドリとして顧客の設計した半導体を製造する。特に、40nm以上の成熟プロセス技術を活用したカスタム製造に強みを持つ。
3.2 特殊プロセス技術
GFは、以下のような特殊技術を提供することで市場での競争力を維持している。
- FD-SOI(Fully Depleted Silicon on Insulator): 低消費電力と高性能を両立する技術。
- RF(Radio Frequency)技術: 5GやIoT向けの無線通信技術。
- 高耐圧半導体: 自動車や産業用機器向けの製品。
3.3 カスタム半導体ソリューション
GFは特定の顧客向けにカスタム半導体を開発・製造しており、特に自動車、航空宇宙、防衛、医療機器市場での需要が高い。
4. 技術内容
GFは最先端の3nmや5nmプロセスに注力するのではなく、成熟したプロセス技術を強化する戦略を取っている。
4.1 プロセス技術
GFは以下の主要プロセスノードを展開している。
- 22FDX(22nm FD-SOI): 低消費電力用途向け。
- 12FDX(12nm FD-SOI): AIや5Gに最適化。
- 40nm/28nm: 産業用途向け。
4.2 主要技術
- 光学・フォトニクス技術: 高速データ通信向け。
- 3Dパッケージング技術: チップの集積度を高める。
- eNVM(組み込み不揮発性メモリ): IoTデバイス向け。
5. 研究開発体制
GFは研究開発(R&D)に多額の投資を行い、各国の大学・研究機関と協力している。
5.1 R&D拠点
- 米国: ニューヨーク州のAlbany Nanotech Complex
- ドイツ: ドレスデンのFraunhofer Instituteとの連携
- シンガポール: A*STAR(シンガポール科学技術研究庁)と共同開発
5.2 研究開発の重点分野
- 低消費電力技術の開発
- 特殊用途向け半導体の高度化
- 新材料・新製造プロセスの探索
6. 経営方針
GFの経営戦略は「差別化」と「市場特化」に基づいている。
6.1 差別化戦略
GFは最先端プロセスではなく、特定市場に適した半導体技術に注力する。
6.2 市場特化
GFは特定市場(自動車、航空宇宙、防衛、5G)に焦点を当て、カスタムソリューションを提供する。
6.3 長期成長戦略
GFは2021年にIPO(新規株式公開)を実施し、さらなる成長資金を確保した。今後の成長戦略には、設備投資の拡大と新規市場の開拓が含まれている。
7. 国際的投資状況
GFは世界中で積極的な投資を行っており、特に米国と欧州での生産能力強化を進めている。
7.1 米国での投資
- 2021年、ニューヨーク州に新しい製造施設を建設する計画を発表。
- 2022年、米国政府からCHIPS法の補助金を受ける可能性。
7.2 欧州での投資
- ドイツのドレスデン工場の拡張。
- 欧州委員会の「European Chips Act」に基づいた支援を受ける計画。
7.3 アジアでの投資
- シンガポールの生産能力を増強。
- 東南アジア市場への展開を加速。
8. 結論
GFは、最先端のプロセス技術開発を追求するのではなく、成熟プロセスと特殊用途市場に特化することで独自の競争力を築いている。同社の事業は、スマートフォンや自動車、5G通信など幅広い分野に影響を与えており、今後もグローバルな投資と技術開発を加速させると考えられる。GFの経営戦略は、長期的に安定した成長を目指し、今後の半導体産業の発展に大きく貢献することが期待される。
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