TOP > 半導体技術・産業動向の教養 > 重要度が高まる半導体商社
在庫が可能な半導体をストックしつつ、多品種少量の半導体の販売や技術のサポートを行っているのが半導体商社です半導体商社には3つの役割があります。1つは営業・マーケテイング機能、もう1つが在庫・物流機能、そして最後に金融機能です。つまり、商社であれば多くの顧客からのあらゆる需要を取りまとめることができるのです。ある顧客メーカーが急な生産中止により半導体が不要になったとしても、その半導体を必要としている顧客にすぐにつなげることができます。
また半導体メーカーから見ても、生産した半導体がもし余ってしまっても商社が買い取ってくれると分かっていれば、安心して半導体を生産できるのです。半導体商社はサプライチェーンの一部を担う存在であるとともに、半導体市場の需要の変動を受け止め多くの半導体メーカーとューザーを最良の形で結びつける、コーデイネーター的存在なのです。
半導体商社のなかで、販売や技術サポート、物流を世界規模で行う商社を「グローバルディストリビューター」といいます。半導体商社は1990年以降、 エレクトロニクス産業が水平分業化に移行するのに伴い活躍の場を広げ、グローバルに発展しました。グローバルで半導体を取り扱う商社のうち特に大きな3社があり、これを「メガディストリビューター」といいます。メガディストリビューターとして数えられているのは、米国アロー・エレクトロニクス、米国アヴネット、台湾WPGホールデイングス(大聯大投資控股)の3社です。特に最大手のアロー・エレクトロニクスは半導体不足が叫ばれるなかでも年々売上を伸ばし、2021年12月期の売上高は前年同期比20%増の344億7700万ドル(約4兆4820億円)となりました。
米国の半導体商社が大きく売上を伸ばしていった背景には、電子機器製造のグローバルな水平分業化が関わっています。1990年代以降米国の電子機器メーカーは顧客の多様化に対応し、それぞれの仕様に合わせた製品を提供するようになりました。またインターネット対応やIT化が進むにつれて電子機器の製品寿命が短くなり、余分な作り置きができなくなりました。
このような状況のなかで、米国の電子機器メーカーはBTO (Build to Order:発注者が指定するシステム仕様。構成に従って組み立てる方式)とTime to Market(市場を占有する確率を高めるため早期に商品を市場に投入すること)を戦略として掲げたことから、垂直統合型のように自社ですべての工程に資本と時間を投入することが難しくなりました。
そこで開発と試作、販売、保守と交換を除く製造工程については、EMS (Electronics Manufacturing Service:電子機器の製造受託サービス)企業に外注せざるを得なくなりました。これにより、米国ではEMS企業が台頭し電子機器メーカーの間でも水平分業型のビジネスモデルに移行していったのです。
製造工程を外注することになった電子機器メーカーは試作・開発に特化していったため、自社で製造していたときに比べて半導体や電子部品の購入数量は極端に少なくなり、反対に試作回数が増えたことで購入する半導体の品種は多くなりました。一方、電子機器の組立製造を担うEMS企業では、アジア地域の工場で半導体や電子部品の調達を行うことが増え、電子機器メーカーと違う地域も含めたグローバルな納入サポートを必要とするようになりました。
こうした要望に応えることができたのが半導体商社です。半導体のグローバルな小口販売・多品種の取り扱いに応じたのはもちろん、インターネットの普及によって発達したネット通販を販売チャネルに加えたことで簡単に、かつ迅速に購入できるように対応しました。半導体メーカーと半導体ユーザー、どちらにとってもメリットとなる事業を展開できたことで、半導体商社は売上を伸ばしていったのです。
電子機器メーカーの多品種少量の生産向けあるいは設計試作用途向けの半導体調達をどこよりもサポートすべく、私の会社においては半導体を1個から買えるようにし、小口で購入するときの価格を明確にし、翌日配送を可能にし、その結果電子機器メーカーのTime toMarketを早めることに貢献しています。そして、これらの取り組みをグローバルに行うことで、半導体商社の重要度を高めています。
近年ではその顧客である半導体ユーザー企業がサプライチェーンの変動リスクに備えて在庫を積み増す動きが出ており、半導体商社が供給や在庫管理をサポートしている例もあります。
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