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中国、台湾、欧米――市場のメインプレーヤたち

今後の世界や日本の半導体市場の動向を論じるためにこれまでの歴史を振り返ると、まずは米国で半導体が発明され、実用化の流れが始まりました。続いて日本が一時的に大きな市場シェアを取得したものの、半導体の需要がパソコンから携帯電話に移り変わる頃から勢いを失っていきます。

ちょうどこの頃から、半導体における世界の動向は複雑化しました。なぜなら水平分業型のビジネスモデルが広まり、例えばフアウンドリ企業が台湾や韓国、中国などで注目を集める一方、米国ではファブレス企業が伸びていくというように、どこの国が強いと一概にいえる状況ではなくなったからです。例えば一言で「最先端の半導体で売上を大きく伸ばしている企業」と表現しても、その実情はフアブレス企業とTSMCのような最先端の半導体製造を行うフアウンドリ企業がタッグを組んでいたりするのです。

2022年現在、半導体製造を専門とするファウンドリ企業で勢いがある企業は次のようなものです。
 ✅TSMC (台湾)
 ✅サムスン電子(韓国)
 ✅UMC (台湾)
 ✅グローバルファウンドリーズ(米国)
 ✅SMlC (中国)

台湾や韓国、米国に加えて中国の企業がフアウンドリ市場の上位につけています。そのなかでトップの座にあるのがTSMCです。TSMCの強みは最先端の製造技術を持っていることにあり、2 nmプロセスについては、2025年までに生産を開始する予定です。

そんな圧倒的に強いTSMCを追いかけるのがサムスン電子で、スマートフオン向けアプリケーションプロセツサや自動車向けマイコンなどを中心に製造しています。またUMCは、アナログーCや液晶ドライバIIC、RF ICなど幅広い半導体製品を扱っているのが特徴です。

一方、半導体設計を専門とするファブレス企業で勢いがあるのは、次のような企業です。
 ✅クアルコム(米国)
 ✅ブロードコム(米国)
 ✅エヌビディア(米国)
 ✅メディアテック(聯嚢科技X台湾)
 ✅AMD(米国)
 ✅ハイシリコン(中国)

ファブレス企業では米国が強く、台湾や中国の企業があとを追う形になっています。最近では台湾や韓国、中国が半導体市場で業績を伸ばしていることは、ニュースなどで目にする機会が多いと思います。そのため「これからの半導体は台湾や韓国だ」というイメージをもっている人も多いかもしれません。しかしここで注意しなければならないのは、TSMCはフアウンドリ企業であるという部分です。どのような半導体を開発するのかを決めるのはファブレス企業で、フアウンドリ企業はフアブレス企業の下請けとして半導体製造を請け負うのです。

つまり台湾や韓国にあるファウンドリ企業が高い製造技術をもち、勢いがあるのは確かなのですが、フアウンドリ企業が主体となって革新的な電子機器を世界に送り出してくる可能性は高くありません。

一方で、例えばフアブレス企業であるクアルコムは、スマートフオンの通信に使われる半導体デバイスをいち早く開発しました。同じくエヌビデイアではグラフィックデータの処理に特化したGPU (Graphic Processing Unit)を開発し、ゲーム機やデータセンターのサーバーなどに使われています。

IC Insightsの調査によると、世界の半導体販売額全体に占めるファブレス企業の割合は年々増加しています。2002年には13・0%でしたが、2010年には23・7%、さらに2020年には32・9%にまで成長しています。ベンチャー企業の勢いもすさまじく、ここ10年で伸びた企業としてはG aN (窒化ガリウム)パワー半導体の米国エフイシェント・パワー。コンバージョン(EPC)、AIチップの米国センブラス・システムズや米国サンバノバ・システムズ、 マイコンの米国アンビツク・マイクロなどが挙げられます。このことから、現状シェアは低い日本企業ですが、今後大手、ベンチャーに限らずまだファブレス企業として成功するチャンスは十分にあると考えられます。

当たり前のことですが水平分業において、ファブレス企業だから優れている、ファウンドリ企業だから劣っているというような優劣はありません。フアブレス企業の高い開発力と、ファウンドリ企業の高い製造技術力の両方がなければ、優れた半導体は作れないのです。近年、台湾や韓国の半導体企業が業績を大きく伸ばしていますが、それぞれの企業が半導体業界のなかでどのような役割をもち何を得意としているのかを認識しておく必要があります。

また、現在のIDMで勢いがあるのは、テキサス・インスツルメンツやインフイニオン・テクノロジーズなどです。テキサス・インスツルメンツは、シリコン製トランジスタを開発した企業です。またインフイニオン・テクノロジーズは総合電機メーカーであるドイツシーメンスから派生して誕生した企業で、主に自動車向けなどの半導体を設計製造しています。米国アナログ・デバイセズとスイスSTマイクロエレクトロニクスの動向も見逃せません。アナログ・デバイセズは、アナログーCやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサなどに強みをもつ企業です。またSTマイクロエレクトロニクスは、イタリアとフランスの半導体メーカーを起源にもち、マイコンやセンサなど幅広い製品を提供しています。

ほかに特徴的な企業を挙げるとすれば、IDMでありながらファウンドリ企業の顔も併せ持っているインテルやサムスン電子のような企業もあります。例えばインテルは、2022年にファウンドリ企業であるイスラエルのタワーセミコンダクターを買収するなど、フアウンドリビジネス強化に取り組んでいます。

2022年現在、世界における半導体トップはどの国であるかを述べるためには、ファウンドリ企業、ファブレス企業、IDM企業の3業態について考える必要があります。半導体企業の勢力図について論じる際には、その企業がどのような業態なのかを念頭におくようにしましよう。




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