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キルビー特許とは何か

キルビー特許(Kilby Patent)は、半導体集積回路(IC: Integrated Circuit)の発明に関連する非常に重要な特許で、近代的な電子技術の基盤を築いたものです。


1. 発明者と背景

キルビー特許は、アメリカの電気技術者ジャック・キルビー(Jack St. Clair Kilby)によって発明されました。彼は1958年、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments)で働いていたときにこの技術を開発しました。

キルビーは、電子回路を一体化する方法を模索していました。当時、電子機器は個別の部品(トランジスタ、抵抗、コンデンサなど)を配線して組み立てる方法が主流でしたが、この手法には以下のような問題がありました:
- 大きなサイズ
- 高い製造コスト
- 複雑な配線
- 信頼性の低下

これらの課題を解決するため、キルビーは単一の半導体基板上に複数の電子部品を集積する技術を発明しました。


2. キルビーの業績

1958年、キルビーは初の集積回路を製作しました。このICは、1枚のゲルマニウム基板上に複数の電子部品を形成し、それらをワイヤーで接続したものでした。この実験が成功し、1959年には彼の発明が特許として登録されました。

キルビー特許の主な特徴は以下の通りです。
- 電子部品を一体化した設計
- 半導体基板を使用
- 小型化・軽量化の実現


3. 特許番号

キルビーの特許は、1959年にアメリカで登録され、特許番号は US3138743A です。この特許は「Miniaturized Electronic Circuits」(小型化された電子回路)という名称で登録されています。


4. 重要性と影響

キルビー特許は、現在の半導体技術や電子産業における基盤技術を提供しました。この発明がなければ、以下のような現代の技術革新は実現しなかったかもしれません。
- コンピュータ
- スマートフォン
- インターネット通信機器
- 自動車の電子制御システム

また、この発明により、ジャック・キルビーは2000年にノーベル物理学賞を受賞しました。


5. キルビー特許とフェアチャイルドの平面プロセス

キルビー特許の後、ロバート・ノイス(Robert Noyce)とフェアチャイルド・セミコンダクターが平面プロセス技術を開発しました。この技術は、シリコン基板上でトランジスタと他の部品を作成し、それらを同じ基板上で直接接続する方法です。

ノイスの技術は、キルビー特許を補完し、現代のシリコンICの量産化を可能にしました。このように、キルビーとノイスの業績が組み合わさることで、現在の半導体産業が確立されました。


6. まとめ

キルビー特許は、半導体産業の黎明期における歴史的な発明であり、現代社会の電子技術の基盤を築いたものです。この発明によって、電子機器は劇的に小型化され、性能が向上し、私たちの生活を変える多くの技術が生まれました。



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