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1961年の半導体産業・技術分野の重要な動向

1961年は、トランジスタ技術の発展と集積回路(IC)の商業化が本格的に始まった年でした。半導体産業は急成長を続け、特にアメリカの企業がリードする形で、軍事・航空宇宙産業と連携しながら発展しました。また、MOSトランジスタの開発や新しい半導体材料の研究も進み、現代の半導体技術の基盤が築かれました。


1. 集積回路(IC)の商業化の始まり

●1958年にジャック・キルビー(Texas Instruments)が最初のICを発明し、1959年にはロバート・ノイス(Fairchild Semiconductor)がプレーナー型ICを開発しました。
●1961年には、ICの商業化が始まり、軍事・宇宙産業向けの電子機器に採用される動きが出てきました。
●特に、NASAの宇宙開発プロジェクトやアメリカ国防総省の軍事電子機器において、小型・高性能なICの需要が高まりました。

この年は、ICが研究段階から実用化の初期段階へと移行した重要な転換点でした。


2. 半導体産業の急成長と主要企業の動向

●アメリカでは、Fairchild Semiconductor、Texas Instruments、Motorola、RCAといった企業がICやトランジスタの研究・生産を進めていました。
●1961年には、これらの企業がICを軍事用途や宇宙開発向けに提供し始め、半導体産業全体の売上が急増しました。
●民生市場ではまだICの採用は進んでいませんでしたが、軍事・宇宙産業を中心にICの市場が形成され始めた年でした。


3. MOSトランジスタ(MOSFET)の発展

●1960年にジョン・アタイラ(John Atalla)とダワン・カーン(Dawon Kahng)がMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を発明しました。
●1961年には、MOSFETの基本設計が確立し、その実用化に向けた研究が進められました。
●MOSトランジスタは、低消費電力・高集積化が可能であり、将来的にICの主流技術となる可能性があると期待されていました。

この技術の発展が、1970年代以降のLSI(大規模集積回路)やVLSI(超大規模集積回路)につながる基盤となりました。


4. 半導体材料の進化とガリウムヒ素(GaAs)の研究

●1961年には、半導体の主流材料がゲルマニウムからシリコンへ移行する動きが加速しました。
●また、ガリウムヒ素(GaAs)の研究が進み、将来的な高周波デバイスや高速トランジスタの素材として注目され始めました。
●特に、軍事用レーダーや通信機器において、高速・高耐久性の半導体が求められる中、シリコンとは異なる特性を持つGaAsの可能性が模索されました。


5. NASAとアメリカ政府の半導体産業支援

●1961年に、アメリカではジョン・F・ケネディ大統領が「アポロ計画」を発表し、1960年代の宇宙開発競争が本格化しました。
●宇宙開発に必要な電子機器は、従来の真空管ではなく、トランジスタやICを活用することで、小型・軽量化が求められました。
●NASAやアメリカ国防総省は、IC技術の研究開発に多額の資金を投入し、半導体産業全体の発展を促進しました。

これにより、1960年代後半にはICの生産コストが低下し、民生市場への普及が進む基盤が築かれました。


6. デジタルコンピュータの発展と半導体の応用

●1961年には、トランジスタを利用したコンピュータの開発が進み、IBMやDEC(Digital Equipment Corporation)などが次世代コンピュータの開発に取り組みました。
●これらの企業は、ICの登場を見据え、小型化・高速化・低消費電力化に向けた技術開発を進めていました。
●この時期の研究開発が、1970年代以降のマイクロプロセッサの誕生へとつながっていきました。


1961年の半導体技術の重要なポイント

✅集積回路(IC)の商業化が始まり、軍事・宇宙産業向けに導入が進む。
✅半導体産業が急成長し、アメリカのFairchild SemiconductorやTexas InstrumentsなどがIC・トランジスタの生産を拡大。
✅MOSトランジスタ(MOSFET)の発展により、低消費電力・高集積化が可能な技術が確立。
✅ガリウムヒ素(GaAs)など新しい半導体材料の研究が進む。
✅NASAのアポロ計画が開始され、ICやトランジスタの需要が急増。
✅コンピュータ技術の発展により、半導体の応用分野が広がる。

まとめ

1961年は、半導体技術がトランジスタの時代からIC(集積回路)の時代へと移行する重要な年でした。

この時期の技術革新により、半導体産業は軍事・宇宙開発を中心に急成長し、1960年代後半には民生市場にも半導体技術が本格的に普及する基盤が築かれました。
また、MOSトランジスタの開発や新しい半導体材料の研究が進み、現代の半導体技術の発展につながる重要な進展がありました。

このように、1961年の半導体技術の進化は、現代のコンピュータ・エレクトロニクス産業の発展に大きな影響を与えた年だったと言えます。

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