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1962年の半導体産業・技術分野の重要な動向

1962年は、半導体技術の進化と実用化が加速し、トランジスタ技術の成熟、IC(集積回路)の発展、そして新たな半導体材料の研究が進んだ年でした。特に、半導体の軍事・宇宙開発への応用が広がり、産業全体が大きく成長する時期となりました。


1. 集積回路(IC)の発展と実用化の進展

1962年は、集積回路(IC: Integrated Circuit)の本格的な発展期でした。
●1958年にジャック・キルビー(Texas Instruments)が世界初のICを発明し、1959年にはロバート・ノイス(Fairchild Semiconductor)がプレーナー型ICを開発しました。
●1962年までに、IC技術は徐々に実用化に向けた開発が進められ、軍事用や航空宇宙分野での利用が増加しました。
●特に、NASAが進めていたアポロ計画では、軽量・高信頼性の電子回路が求められ、ICの採用が拡大していきました。

この年を境に、ICの重要性が高まり、産業界ではICの研究開発競争が激化していきました。


2. 半導体産業の成長と市場拡大

1962年は、世界の半導体市場が急成長を遂げた年でもあります。
●アメリカでは、トランジスタとICの需要が急増し、特に軍事関連と宇宙開発向けの半導体が成長を牽引しました。
●Fairchild Semiconductor、Texas Instruments、Motorola、RCAといった企業が、積極的にICやトランジスタを開発・生産しました。
●半導体市場全体としても拡大し、ICの商業化が進むことで、コンピュータ、通信機器、自動車産業での利用が増えました。

この市場の成長が、後の半導体業界の基盤を築くこととなります。


3. MOSトランジスタの登場

●1960年にBell Labsのジョン・アタイラ(John Atalla)とダワン・カーン(Dawon Kahng)がMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を発明しました。
●1962年には、この技術が徐々に改良され、MOSトランジスタの実用化に向けた研究が進みました。
●当時の主流はバイポーラトランジスタでしたが、MOSFETは消費電力が低く、ICに適しているため、後の発展に向けた基礎が築かれました。


4. NASAとアポロ計画による半導体需要の増大

●1962年は、NASAのアポロ計画が本格的に進められた時期であり、宇宙開発において軽量で高信頼性の電子部品が求められました。
●アメリカ政府が半導体技術に巨額の投資を行い、ICやトランジスタの技術革新を後押ししました。
●この影響で、Fairchild SemiconductorやTexas Instrumentsなどの企業は、軍事・航空宇宙向けの半導体を開発し、市場を拡大しました。

アポロ計画は、ICの発展を加速させ、後のコンピュータ産業にも大きな影響を与えました。


5. 半導体材料の進化

●1962年は、半導体の材料としてシリコンが主流となり、ゲルマニウムは徐々に使用されなくなってきた時期です。
●また、化合物半導体(GaAs:ガリウムヒ素)の研究も進められ、マイクロ波や高周波デバイス向けの技術が発展し始めました。
●特に、ガリウムヒ素は高周波特性に優れているため、通信機器やレーダーに応用されることが期待されました。


6. LED(発光ダイオード)の発明

●1962年には、Nick Holonyak Jr.(ニック・ホロニアック)が世界初の可視光LED(赤色LED)を発明しました。
●これにより、LED技術の発展が加速し、後にディスプレイ、信号機、光通信分野などで広く利用されることになりました。
●LEDの発明は、半導体の新たな応用分野を切り開き、エレクトロニクス産業における重要な進展となりました。


1962年の半導体技術の重要なポイント

✅集積回路(IC)の実用化が進み、軍事・宇宙開発分野での利用が拡大。
✅半導体市場が拡大し、アメリカを中心にトランジスタやICの需要が増加。
✅MOSトランジスタ(MOSFET)の技術が発展し、後のIC設計に大きな影響を与える。
✅NASAのアポロ計画による半導体需要の急増。
✅ガリウムヒ素(GaAs)などの新しい半導体材料の研究が進む。
✅世界初の可視光LED(赤色LED)が発明され、新たなエレクトロニクス技術の発展が始まる。


まとめ

1962年は、半導体産業が本格的に成長し、集積回路(IC)の商業化、トランジスタ技術の進化、LEDの発明など、多くの技術革新が起きた年でした。
特に、ICの実用化が進み、NASAの宇宙開発による半導体需要の増加が、業界全体の発展を加速させました。

この時期の技術革新が、後のコンピュータ産業やエレクトロニクス産業の基盤となり、半導体産業が現代の情報化社会の基盤を築く大きな転換点となりました。



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