TOP > 半導体年表 > 2018年の半導体産業・技術分野の重要な動向
2018年の半導体業界は、メモリバブルのピーク、AI・自動運転向け半導体の成長、米中貿易摩擦の始まり、TSMCの7nmプロセスの量産開始、半導体M&Aの活発化などが重要なトピックでした。以下、それぞれの動向を詳しく解説します。
1. メモリ市場のピークとその後の減速
DRAM・NANDフラッシュの高騰
●2018年の半導体市場は、メモリ(DRAM・NANDフラッシュ)が主導する形で記録的な売上を達成しました。
●DRAMの価格は2017年から3倍近くに上昇し、Samsung、SK Hynix、Micronの3社が市場を寡占する状況が続きました。
●NANDフラッシュも2017年まで高騰していましたが、2018年下半期から価格が下落傾向になりました。
●データセンター向けのメモリ需要の増加が、価格上昇を支えましたが、スマートフォン市場の成長鈍化により下半期から供給過剰が発生しました。
Samsungが半導体売上でIntelを抜く
●Samsung ElectronicsがIntelを抜いて世界最大の半導体メーカーになりました。
●Intelは約25年間、半導体市場のトップでしたが、メモリ価格の急騰によりSamsungが売上で逆転しました。
2. AI・自動運転向け半導体の成長
AI・機械学習向けチップの拡大
●NVIDIAの「Tesla V100」や「Turing(RTXシリーズ)」がAIやディープラーニング向けに採用され、クラウドデータセンターやスーパーコンピューターでの利用が拡大しました。
●Googleは第2世代のTPU(Tensor Processing Unit)を発表し、AI処理の高速化を進めました。
●Amazon(AWS)が独自のAI向けプロセッサ「Inferentia」の開発を発表し、AIチップ市場に本格参入しました。
自動運転向け半導体の開発競争
●NVIDIAが「Drive Xavier」プラットフォームを発表し、自動運転用のAIプロセッサを市場に投入しました。
●Intel傘下のMobileyeがADAS(先進運転支援システム)向けのEyeQ4プロセッサを発表し、自動運転市場のシェア拡大を目指しました。
●Teslaは独自の自動運転用AIチップの開発を発表し、2019年の自社車両への搭載を計画しました。
3. 米中貿易摩擦の影響が半導体業界に波及
●2018年に本格化した米中貿易戦争は、半導体業界にも大きな影響を及ぼしました。
●米国政府はZTE(中興通訊)に対して米国企業との取引禁止措置を実施し、一時的にZTEの事業継続が困難になりました。
●その後、Huaweiも米国の監視対象となり、半導体業界のサプライチェーンの分断リスクが高まりました。
●中国は半導体の自給率向上を目指し、「中国製造2025」の一環としてSMICやYMTCの成長を促進しました。
4. TSMCが7nmプロセスの量産を開始
●TSMC(台湾)が世界初の7nmプロセスの量産を開始し、Apple(A12 Bionic)、Huawei(Kirin 980)、AMD(Zen 2アーキテクチャ)などの主要チップに採用されました。
●Intelは10nmプロセスの量産に遅れを取り、TSMCとSamsungに先端プロセス競争で後れを取る形となりました。
●Samsungも7nm EUV(極端紫外線リソグラフィ)を導入し、次世代プロセスの開発を加速しました。
5. 半導体業界のM&A(企業買収)の活発化
QualcommのNXP買収失敗
●QualcommはオランダのNXP Semiconductors(車載・IoT向け半導体大手)を約440億ドルで買収しようとしましたが、中国政府の承認が得られず、取引が破談しました。
●これにより、米中貿易摩擦の影響がM&A市場にも波及することが明らかになりました。
BroadcomがQualcomm買収を試みるも失敗
●Broadcomは1,170億ドル(史上最大の半導体M&A)でQualcommを買収しようとしましたが、米国政府(CFIUS)が国家安全保障上の懸念を理由に阻止しました。
IntelがeASICを買収
●Intelは、FPGA(プログラム可能な半導体)の強化を狙い、eASICを買収しました。
6. 5G向け半導体の開発加速
●Qualcommが5Gモデム「Snapdragon X50」を発表し、5Gスマートフォン市場の競争が本格化しました。
●Huawei(HiSilicon)、Samsung、MediaTekも5G対応のモバイルチップセットを開発し、5G通信の普及に向けた準備が進みました。
●5Gの本格商用化は2019年以降でしたが、2018年はその技術基盤が固まった年でした。
7. 自動車・産業向け半導体の成長
●EV(電気自動車)やADAS(先進運転支援システム)の普及により、自動車向け半導体の需要が拡大しました。
●NXP、Infineon、Renesas、STMicroelectronicsなどが自動車向けチップ市場をリードしました。
●特にパワー半導体(SiC、GaN)の成長が加速し、EV向けインバーターなどの需要が拡大しました。
まとめ
2018年の半導体業界では、以下の重要な動向が見られました。
1. メモリ市場のピークとその後の減速(SamsungがIntelを抜く)
2. AI・自動運転向け半導体の成長(NVIDIA、Google、Intel、Teslaなど)
3. 米中貿易摩擦の影響(ZTE制裁、Huawei監視、中国の半導体国産化)
4. TSMCが7nmプロセスの量産開始(Apple、Huawei、AMDが採用)
5. M&Aの活発化と失敗(QualcommのNXP買収失敗、BroadcomのQualcomm買収阻止)
6. 5G向け半導体の開発加速(Qualcomm、Huawei、Samsungなど)
7. 自動車向け半導体市場の成長(EV、ADAS、SiCパワー半導体の需要増)
2018年は、半導体業界の急成長が続く一方で、米中貿易戦争の影響が本格化し、2020年代の市場動向に大きな影響を与える転換点となった年でした。
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