TOP > 半導体年表 > 1960年の半導体産業・技術分野の重要な動向

1960年の半導体産業・技術分野の重要な動向

1960年は、半導体産業の発展において極めて重要な年でした。この時期、トランジスタ技術が成熟しつつあり、さらにIC(集積回路)の誕生によってエレクトロニクス産業全体が大きな転換点を迎えました。以下に、1960年の半導体産業・技術分野における主要な出来事を詳しく説明します。


1. 集積回路(IC)の誕生

① ジャック・キルビーによる最初のIC実用化
●1958年、テキサス・インスツルメンツ(TI)のジャック・キルビーが世界初のIC(Integrated Circuit)を発明しました。
●1960年には、TIが世界初の商用ICの生産を開始し、IC時代の幕が開きました。

② ロバート・ノイスによるICの改良
●1959年、フェアチャイルド・セミコンダクターのロバート・ノイスがICの製造方法を改良し、プレーナー技術を導入しました。
●プレーナーICは1960年に実用化され、量産が可能に。
キルビーのICはワイヤーで接続する方式で大量生産が困難だったが、ノイスのICはフォトリソグラフィと酸化膜技術を活用し、安定した量産が可能になった。これにより、ICの商業化が加速し、エレクトロニクス産業全体に革命が起こる。


2. プレーナー技術とシリコンICの台頭

① フェアチャイルドのプレーナー技術
●1960年、フェアチャイルド・セミコンダクターがプレーナー技術を活用したICを発表。
●プレーナー技術とは、シリコン基板表面に酸化膜を形成し、フォトリソグラフィで精密な回路を作る技術。
●トランジスタの信頼性が飛躍的に向上し、シリコンICの量産化が可能になった。

② シリコンが半導体材料の主流に
●1950年代はゲルマニウム(Ge)トランジスタが主流だったが、1960年頃からシリコン(Si)トランジスタが本格的に普及。
シリコンは高温耐性があり、酸化膜を形成しやすいためICに適していた。フェアチャイルドの技術革新により、シリコンICの商用化が進む。


3. トランジスタ技術の進化

① MOSトランジスタの発展
●1959年に発明されたMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)が、1960年に本格的に研究され始めた。
MOSFETは従来のバイポーラトランジスタに比べて消費電力が低く、集積度を高めやすい。
1960年にはMOSFETを使った初の実験的な集積回路が開発された。

② シリコントランジスタの低価格化
●シリコントランジスタの生産技術が向上し、コストが大幅に低下。
●これにより、ラジオ、テレビ、計算機などの家電製品に広く普及。


4. 半導体産業の拡大と市場動向

① アメリカが半導体市場を主導
●1960年時点で、アメリカが世界の半導体市場をリード。
●フェアチャイルド・セミコンダクター、テキサス・インスツルメンツ(TI)、モトローラなどが主要プレイヤー。

② 軍事用途から民生用途へ
●1950年代は主に軍事用途向け(ミサイル、レーダー、航空機制御)に使われていたが、1960年から民生市場に拡大。
例えば
●トランジスタラジオ(ソニーなど)
●電卓・計算機
●自動車の電子制御
●コンピュータの高性能化


③ 日本・ヨーロッパの半導体産業の成長
●日本では、ソニー、日立、東芝などがアメリカから技術を導入し、半導体産業を拡大。
●1960年代前半はまだ技術面でアメリカに遅れていたが、国策として半導体産業の強化が進む。


5. 半導体技術の応用分野の拡大


① 計算機・コンピュータ
●1960年には、IBM 1401(商用コンピュータ)が発売される。
●まだICではなくトランジスタを使用していたが、コンピュータの小型化と低コスト化が進展。
●IC技術の進歩により、後のコンピュータ革命につながる。

② 宇宙開発と半導体
●1960年はアメリカとソ連の宇宙開発競争が激化していた時期。
●アメリカのNASAが半導体技術を活用し、宇宙探査機やミサイル制御システムに導入。
●半導体の耐久性や信頼性の向上が求められ、研究が進む。

③ 自動車産業への応用
●1960年代から、自動車に電子部品が導入され始める。
●エンジン制御や点火装置に半導体が活用され、自動車産業にも影響を与える。


6. まとめ

1960年の半導体産業は、トランジスタ技術の成熟とICの登場によって、新たな時代を迎えた年でした。

✅ IC(集積回路)の商用化が開始(テキサス・インスツルメンツとフェアチャイルド)
✅ プレーナー技術の確立(安定したIC量産が可能に)
✅ シリコンが半導体の主流に(ゲルマニウムからの移行が進む)
✅ MOSFETの研究が進展(低消費電力・高集積化への道)
✅ 半導体が軍事用途から民生用途へ拡大(家電、自動車、コンピュータなど)
✅ 日本やヨーロッパの半導体産業も成長(アメリカ中心の市場に参入)

この年は、IC技術が誕生し、半導体が本格的にエレクトロニクス産業を変革し始めた時期といえます。




[オススメ記事]1952年の半導体産業・技術分野の重要な動向
[オススメ記事]1946年の半導体産業・技術分野の重要な動向