TOP > 半導体年表 > 1972年の半導体産業・技術分野の重要な動向
1972年は、マイクロプロセッサ(MPU)技術の発展、DRAM市場の成長、半導体製造技術の進化が進んだ年でした。Intel 8008の発表、TTL ICの普及、半導体製造技術の向上などが、特に重要な出来事です。
1. Intel 8008:8ビットマイクロプロセッサの誕生
1972年4月、Intelは世界初の8ビットマイクロプロセッサ「Intel 8008」を発表しました。これは、前年に発表された4ビットMPU「Intel 4004」の技術を基盤に開発されたもので、より高性能なプロセッサとして登場しました。
Intel 8008の特徴
●8ビットアーキテクチャを採用
●トランジスタ数:3,500個
●クロック周波数:最大800kHz
●アドレス可能なメモリ:16KB
●最初の用途:コンピュータ端末(Datapoint 2200)向けのプロセッサ
Intel 8008は、データ処理能力が向上し、組み込みシステムや端末機器の制御に活用されました。この技術は、後の「Intel 8080」「Intel 8086」へと発展し、PCの基盤となるマイクロプロセッサ技術の礎を築きました。
ポイント
8ビットMPU「Intel 8008」の登場により、より高度なデジタル処理が可能になり、コンピュータ市場の拡大を加速した。
2. DRAMの成長とメモリ市場の拡大
1972年は、半導体メモリ(特にDRAM)が急速に成長した年でした。前年に登場した「Intel 1103(1KビットDRAM)」が大きな成功を収め、DRAMは磁気コアメモリに代わる標準技術としての地位を確立し始めました。
DRAM市場の拡大の背景
●IBMをはじめとするコンピュータメーカーがDRAMを採用
●コスト削減と高密度化の利点により、磁気コアメモリの代替として普及
●日本企業(NEC、東芝、日立)がDRAM開発を本格化
この流れにより、半導体メモリの重要性が増し、後のメモリ産業の成長につながりました。
ポイント
DRAMが本格的に普及し、コンピュータの記憶装置としての主流技術となる道が開かれた。
3. TTL ICの普及とデジタル回路の進化
1972年には、TTL(Transistor-Transistor Logic)ICの普及が加速しました。TTLは、1960年代にフェアチャイルドとTexas Instruments(TI)が開発した技術ですが、1970年代に入ると、デジタル回路の標準技術として確立されました。
TTL ICの特徴
●高速で信頼性が高い
●相互互換性があり、多くのメーカーが採用
●コンピュータや制御機器の回路設計が容易になる
特に、Texas Instrumentsの「7400シリーズ」は、業界標準のデジタルICファミリーとして定着しました。
ポイント
TTL ICの普及により、デジタル回路の設計が容易になり、コンピュータや電子機器の発展が加速した。
4. 半導体製造技術の進化
1972年は、半導体の製造プロセス技術が進化し、微細加工技術や品質管理が向上した年でした。
主な製造技術の進展
●フォトリソグラフィ技術の向上(より微細な回路形成が可能に)
●イオン注入技術の発展(トランジスタの特性を精密に制御)
●クリーンルーム技術の改善(半導体の歩留まり向上)
これにより、LSIの量産化が加速し、半導体デバイスのコスト削減と性能向上が実現しました。
ポイント
製造技術の向上が、半導体の大量生産と低価格化を推進し、業界の成長を支えた。
5. 日本の半導体産業の発展
1972年は、日本の半導体産業が本格的に成長を遂げた年でもありました。特に、電卓市場の拡大とともに、日本企業のMOS IC(MOS集積回路)技術が進化しました。
日本企業の動向
●シャープが電卓向けのMOS ICを大量生産
●NECがメモリ分野に進出し、DRAM技術を開発
●通商産業省(現・経済産業省)が半導体産業を支援し、国内企業の競争力を強化
日本の企業は、この時期に半導体製造技術の向上を進め、国際競争力を強化する基盤を築きました。
ポイント
日本の半導体企業がMOS ICやDRAM技術の開発を本格化し、国際競争力を高めた。
6. CMOS技術の進展
1972年には、CMOS(Complementary MOS)技術の研究が進み、低消費電力デバイスの可能性が広がりました。
CMOSの特徴
●低消費電力であり、バッテリー駆動デバイスに適用可能
●高集積度が可能であり、将来のVLSI(超大規模集積回路)技術に発展
●耐ノイズ性が高く、信頼性が向上
この技術は、デジタル時計、電卓、ポータブル電子機器の進化を促し、後の携帯機器や組み込みシステムに応用されていきます。
ポイント
CMOS技術の発展が、低消費電力デバイスの開発を加速させた。
まとめ
✅ Intelが世界初の8ビットマイクロプロセッサ「Intel 8008」を発表し、デジタルコンピューティングの可能性を拡大した。
✅ DRAM(特にIntel 1103)が市場で成功し、磁気コアメモリからの転換が進んだ。
✅ TTL IC(特にTIの7400シリーズ)が普及し、デジタル回路の標準技術となった。
✅ 半導体製造技術が進化し、微細加工技術の向上と量産化が加速した。
✅ 日本の半導体企業がMOS ICやメモリ技術を開発し、国際市場での競争力を強化した。
✅ CMOS技術が進展し、低消費電力デバイスの発展が始まった。
1972年は、8ビットMPUの登場とDRAMの普及が進み、半導体産業のさらなる成長の基盤が築かれた年だった。
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