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中国SMICの概要

中国のSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)は、中国を代表するファウンドリ企業であり、その創立背景、技術的状況、経営状況などについて以下に詳しく説明します。

創立背景


SMICは2000年に設立されました。本社は中国・上海にあり、主に半導体の受託製造(ファウンドリ)を手がけています。設立当初、中国政府の支援を受け、国内での半導体製造能力を高めることを目的としていました。中国政府は「半導体産業の自立」を国家戦略として掲げており、その一環としてSMICは重要な役割を果たす企業とされています。

創業者は張汝京(リチャード・チャン)で、彼はTSMC(台湾積体電路製造)での経験を生かし、SMICを立ち上げました。ただし、SMICは設立後間もなく、TSMCから技術の不正流用を巡る訴訟を起こされ、最終的に和解しています。この事件は、中国の半導体産業が直面する技術移転問題の象徴的な事例とも言えます。


技術的状況


【初期技術開発】
設立当初、SMICは主に200mmウェハ製造を行い、比較的成熟したプロセス技術を提供していました。しかし、2010年代以降、先端プロセス技術の開発に注力し、300mmウェハ製造やFinFET技術の導入に取り組みました。
【現在の技術力】
SMICは現在、7nmプロセスの製造に成功したとされています。2022年、同社が7nmプロセスで製造されたチップを出荷していることが確認されましたが、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置を使用せず、DUV(深紫外線)リソグラフィ装置でこの技術を達成したことが注目されています。これにより、EUV装置を輸入できない制約下での技術革新が評価されています。

ただし、7nm以下のプロセスで大量生産を行うためには、EUV装置が不可欠とされており、SMICはこれにアクセスできないことが技術的な制約となっています。この背景には、アメリカ政府が主導する輸出規制があり、ASMLのEUV装置が中国企業に販売されないよう制限されていることが挙げられます。


経営状況


【資金調達】
SMICは2020年に上海科創板(STAR Market)で上場し、同年、IPOによって約70億ドルを調達しました。この資金は先端プロセス技術の研究開発や生産能力の拡大に充てられています。SMICはこの上場により、グローバルなファウンドリ企業としての地位をさらに強化しました。
【売上と市場シェア】
SMICの売上は2023年時点で60億ドルを超え、世界のファウンドリ市場で第5位を占めています。ただし、TSMCやSamsungといったトッププレーヤーと比較すると、技術力や市場シェアにおいて大きな差があります。
【経営課題】
- アメリカの輸出規制
アメリカ政府による制裁により、SMICはEUV装置や先端技術にアクセスできない状況が続いています。これにより、最先端プロセス技術の開発競争での遅れが懸念されています。
- 競争環境
グローバル市場では、TSMCやSamsungのような企業が圧倒的な技術力と生産規模を誇ります。一方、中国国内では、YMTC(長江存儲科技)やHSMC(武漢弘芯半導体)などの新興企業との競争も激化しています。
- 人材と技術移転
半導体製造は高度な専門知識と経験を必要とする分野であり、SMICは優秀な人材の確保や技術移転の促進に取り組んでいます。しかし、米中対立により外国からの技術導入が難しくなっていることが課題です。


中国における位置づけ


SMICは中国政府から大規模な補助金を受け、国家戦略の一環として発展しています。国家半導体基金(ビッグファンド)や地方政府からの支援を受け、中国内需の多くを賄う役割を担っています。また、国防産業や通信機器などの分野で中国国内の需要を支える重要な企業と見なされています。


将来展望


SMICは短期的には中国国内市場を重視しつつ、長期的にはグローバルな競争力を強化することを目指しています。7nmプロセス以上の技術開発やEUV装置への依存を減らす独自技術の確立が課題です。また、半導体自給率向上を目指す中国政府の政策がSMICを支え続ける限り、同社の成長が期待されます。

ただし、米中対立の影響や技術的制約により、SMICがTSMCやSamsungに対抗する存在となるには時間がかかると予測されています。



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