TOP > 半導体年表 > 2020年の半導体産業・技術分野の重要な動向
2020年は、半導体産業にとって大きな変化と成長の年でした。COVID-19パンデミックの影響を受けつつも、テレワークの普及やデジタル化の加速、5Gの本格展開、米中貿易摩擦の激化など、多くの要因が半導体市場に影響を与えました。以下に、2020年の半導体産業の主要な動向を詳しく解説します。
1. COVID-19パンデミックの影響と需要増加
テレワーク・オンライン需要の急増
●2020年初頭に発生したCOVID-19のパンデミックにより、リモートワーク、オンライン教育、Eコマースの普及が急速に進みました。
●これにより、クラウドサービス、データセンター、PC・タブレット、ゲーム機の需要が大幅に増加し、それを支える半導体の需要も急伸しました。
●特に、IntelやAMDのCPU、NVIDIAやAMDのGPU、MicronやSamsungのDRAM・NANDフラッシュメモリが需要を伸ばしました。
半導体サプライチェーンの混乱
●一方で、パンデミックの影響によりサプライチェーンの混乱が発生。中国や東南アジアの製造拠点が一時的に閉鎖されたことで、一部の半導体製品の供給に影響が出ました。
●しかし、2020年後半には生産体制が回復し、旺盛な需要に対応する形で半導体業界全体の売上が成長しました。
2. 5Gの本格展開と半導体市場への影響
●5G(第5世代移動通信システム)の本格的な商用化が2020年に進み、対応スマートフォンや通信インフラ向けの半導体需要が拡大しました。
●Qualcomm(スナップドラゴン)、MediaTek、Samsung、Huawei(HiSilicon)などが5G対応SoC(システムオンチップ)を投入し、市場競争が激化しました。
●特に、5G基地局向けのRF半導体や高性能プロセッサの需要が高まり、TSMCやSamsungが先端プロセス(5nm)での製造を強化しました。
3. 米中貿易摩擦と半導体業界の地政学的変化
Huaweiへの規制強化
●米国政府(トランプ政権)は、2020年にHuawei(ファーウェイ)への規制をさらに強化し、TSMCや米国の半導体企業がHuaweiへ半導体を供給できないようにしました。
●これにより、Huaweiの自社設計チップ(HiSilicon Kirinシリーズ)はTSMCでの製造が困難になり、Huaweiのスマートフォン事業に大きな影響を与えました。
●その結果、中国国内ではSMIC(中芯国際)が代替生産を試みましたが、先端プロセス(7nm以下)の製造技術が不足しており、競争力が低下しました。
中国の半導体自給自足の動き
●米国の制裁を受けて、中国政府は「中国半導体自給率の向上」を掲げ、国策として半導体産業への投資を強化しました。
●SMIC、Yangtze Memory Technologies(YMTC)、CXMT などの中国企業が、製造技術やDRAM・NANDフラッシュの開発を加速。
●しかし、EUV露光装置などの先端技術で欧米企業(ASMLやLam Research)に依存しているため、技術開発には時間がかかる見込みでした。
4. 先端半導体プロセスの進化
TSMCとSamsungが5nmプロセスを量産
●TSMC(台湾)とSamsung(韓国)は、2020年に5nmプロセスの量産を開始しました。
●AppleのA14 Bionic(iPhone 12搭載)やQualcommのSnapdragon 888はTSMCの5nmで製造され、高性能・低消費電力化が進みました。
●Intelは10nmプロセスの歩留まり問題を抱えており、7nmプロセスの開発遅延も発表し、競争力低下が懸念されました。
5. GPU・AI半導体市場の急成長
NVIDIAの躍進
●NVIDIAは、2020年に新世代のAmpereアーキテクチャ(RTX 30シリーズ)を発表し、ゲーミングやデータセンター向けGPU市場でシェアを拡大しました。
●クラウドAIやディープラーニング向けのGPU(A100)も大きな成長を遂げ、AI分野での半導体需要が増加しました。
AMDの成長
●AMDは、Zen 3(Ryzen 5000シリーズ)を発表し、デスクトップPC市場でIntelを大きく上回る性能を実現しました。
●データセンター向けEPYC(サーバー向けCPU)の採用も拡大し、Intelのシェアを奪い始めました。
6. 半導体業界のM&A(企業買収)
NVIDIAによるARM買収
●NVIDIAがARM(英国)を400億ドルで買収する計画を発表し、業界に大きな衝撃を与えました。
●ARMはスマートフォンやIoTデバイスのプロセッサ設計で広く採用されており、この買収によりNVIDIAはデータセンターからスマートフォンまで幅広い市場を掌握する可能性がありました。
●しかし、規制当局の審査が厳しく、最終的に2022年に買収計画は撤回されました。
AMDによるXilinx買収
●AMDがFPGAメーカーのXilinxを約350億ドルで買収する計画を発表し、データセンターやAI分野での競争力を強化しました。
7. 自動車向け半導体の供給不足
●2020年後半から自動車向け半導体の供給不足が深刻化しました。
●パンデミック初期には自動車メーカーが生産を縮小したため、半導体メーカーも生産調整を行いましたが、その後急速に自動車需要が回復し、供給不足が発生しました。
●Infineon、NXP、Renesas、STMicroelectronics などの車載半導体メーカーが影響を受けました。
まとめ
2020年の半導体業界は、以下のポイントが重要でした。
1. COVID-19によるデジタル化の加速(PC・クラウド・ゲーム市場が急成長)
2. 5Gの普及と半導体需要の拡大
3. 米中貿易摩擦によるHuawei制裁と中国の半導体自給計画
4. TSMC・Samsungの5nmプロセス量産開始
5. AI・GPU市場の成長(NVIDIA・AMDの躍進)
6. NVIDIAのARM買収発表、AMDのXilinx買収
7. 自動車向け半導体の供給不足
2020年は半導体が世界の経済・技術・地政学において重要な戦略物資であることが再認識された年でした。
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