TOP > 半導体年表 > 1958年の半導体産業・技術分野の重要な動向
1958年は、半導体技術の歴史において画期的な年であり、世界初の集積回路(IC, Integrated Circuit)が発明された年です。この技術の登場が、後のマイクロプロセッサやコンピュータの発展を支える基盤となりました。
1. 世界初の集積回路(IC)の発明
1958年9月12日、テキサス・インスツルメンツ(Texas Instruments, TI)のジャック・キルビー(Jack Kilby)が、世界で初めて集積回路(IC)を発明しました。
背景
●1950年代、電子回路の小型化が進む一方で、個別のトランジスタや抵抗、コンデンサを配線して作る方法には限界があった(「部品の信頼性の問題」や「製造の複雑さ」など)。
●軍事・宇宙開発用途では、より小型で高性能な電子回路の需要が高まっていた。
キルビーのIC
●ゲルマニウム基板上に複数の電子部品(トランジスタ、抵抗、コンデンサ)を一体化し、単一のデバイスとして動作する集積回路を試作。
●1958年9月にTI内でデモンストレーションを行い、集積回路の概念を実証。
●この発明により、電子回路を劇的に小型化・高性能化する技術の道が開かれた。
影響
●キルビーの発明を受け、1960年代以降、半導体業界全体がIC技術へシフト。
●1970年代にはマイクロプロセッサが登場し、今日のコンピュータ産業の基盤を築くことになる。
●ジャック・キルビーは2000年にノーベル物理学賞を受賞し、IC発明の功績が正式に認められた。
2. フェアチャイルド・セミコンダクターの躍進
1957年に設立されたフェアチャイルド・セミコンダクター(Fairchild Semiconductor)が、1958年にはシリコントランジスタの量産化に成功し、半導体業界のリーダーとして台頭しました。
●シリコンを使ったトランジスタの製造技術が飛躍的に向上。
●従来のゲルマニウムトランジスタよりも高温に強く、耐久性に優れるため、軍事やコンピュータ用途で急速に採用が進む。
●創業メンバーにはロバート・ノイス(後のIntel創業者)やゴードン・ムーア(ムーアの法則で有名)が含まれていた。
●フェアチャイルドは、この後、1960年代にICの大量生産技術を確立し、現在の半導体産業の基盤を築くことになる。
3. シリコンが半導体の主流に
1950年代初頭まではゲルマニウムが半導体材料の主流でしたが、1958年頃にはシリコンの採用が急速に進み、業界の標準材料となり始めた。
シリコンのメリット
●酸化膜(SiO₂)を形成できるため、MOSFETやICの開発に有利。
●高温で安定して動作し、軍事・産業用途に適していた。
●大量生産が可能になり、コストが低下。
フェアチャイルド・セミコンダクターを中心に、シリコンを用いたトランジスタの量産が進み、ゲルマニウムトランジスタは徐々に市場から姿を消していく。
4. 半導体技術の軍事・宇宙産業への応用
1958年は、冷戦の真っ只中であり、米ソ両国は軍事・宇宙開発競争を激化させていました。
●1957年にソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げたことで、アメリカは宇宙開発を加速。
●1958年7月29日、アメリカはNASA(米国航空宇宙局)を設立。
●宇宙開発やミサイル制御において、小型・高性能な半導体が不可欠になり、ICやトランジスタの研究開発が急速に進む。
●軍事用途でも、レーダーやミサイル制御システムへの半導体導入が加速。
5. 半導体製造技術の進展
●フォトリソグラフィ技術の発展
●光を使ってシリコンウェハーに微細なパターンを形成する技術が進化。
●ICの大量生産が可能になる土台が作られた。
●拡散技術(Diffusion Technology)の改良
シリコンの不純物ドーピング(P型・N型)を制御する技術が進化し、高性能トランジスタの製造が可能に。
6. IBMと半導体技術の関係強化
●1958年頃、IBMはメインフレームコンピュータの開発において、真空管からトランジスタへの移行を本格化。
●IC技術の可能性を見据え、研究開発に多額の投資を開始。
●この動きが、後の1964年のIBM System/360(初の商業用IC搭載コンピュータ)の開発につながる。
まとめ
1958年は、半導体産業の歴史において極めて重要な年であり、以下の技術的ブレークスルーがありました。
1. 世界初の集積回路(IC)の発明(ジャック・キルビー)
2. フェアチャイルド・セミコンダクターの躍進(シリコントランジスタの量産化)
3. シリコンが半導体の主流材料に確定
4. 半導体技術の軍事・宇宙産業への応用拡大(NASA設立)
5. フォトリソグラフィや拡散技術の進展
6. IBMがトランジスタとIC技術への投資を開始
特に「ICの発明」は、コンピュータ、スマートフォン、IoTなど現代の電子機器の基盤となる重要な出来事であり、半導体産業の未来を決定づけた年でした。
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